カスタマーサクセスのロータッチを効果的に推進するために必要な考え方とは?

  • 公開日:2022年2月17日(木)

カスタマーサクセスのハイタッチ、ロータッチ、テックタッチの考え方において、重要顧客に対するハイタッチや効率的な支援を実現するテックタッチももちろん重要ですが、実際にはロータッチでの支援を適切に行えるかどうかが、多くの顧客の成功を実現する鍵になります。

ロータッチでの支援に必要な要素として、顧客のエンゲージメントを重視したマーケティング視点が重要であることはご存じでしょうか。

今回は、カスタマーサクセスのロータッチ支援について、その意味合いから、効果的な推進に必要な考え方、手法について解説していきます。

カスタマーサクセスにおけるロータッチの役割

まずは、タッチモデルの考え方と、その中でのロータッチの位置付けや特徴を見ていきましょう。

 

ロータッチとは?

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限られたリソースで多くの顧客の成功に伴走し、カスタマーサクセスの価値を最大化するために用いられるのが、ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチからなるタッチモデルの考え方です。

顧客を見込めるLTV(顧客生涯価値)に沿って分類し、それぞれに対して適切なレベルの支援を提供するというものですが、もっとも手厚いハイタッチと、一斉支援が中心のテックタッチの中間に位置するのがロータッチです。

ロータッチの特徴は?

タッチモデルのピラミッドでは中間に位置するロータッチですが、ハイタッチともテックタッチとも異なる特徴が存在します。

ロータッチでは、ハイタッチのような個別の手厚い対応は行わず、顧客がある程度自走しつつ、利用状況やヘルススコア、エンゲージメントなどのデータをもとに、必要に応じて対応を行うというのが基本的な姿勢です。

また、ハイタッチが対面や電話など直接的なコミュニケーションを中心とし、テックタッチがデジタルツールを用いるのに対し、ロータッチでは、その両方を用いたハイブリッドなコミュニケーションをとるのも特徴と言えるでしょう。

複数の顧客に対応するケースが多いため、適切なコミュニケーションチャネルの設計、顧客の成功や継続を実現するための汎用性のあるプロセス設計など、ハイタッチ、テックタッチとは異なる種類のスキルを必要とします。

ロータッチの具体的な内容

ロータッチでの支援では、主に以下のような対応を行います。

・メール、MAツールなどを用いた情報配信

ロータッチでは、対面や電話での個別対応は行わず、主にメールやMAツールなどを用いて複数の顧客に対して情報のインプットを行います。とは言え、テックタッチのように完全に画一的な対応ではないということは注意が必要です。

・利用率、ヘルススコアに基づいたサポート

利用率やヘルススコアなど、汎用的なKPIを判断軸に、リスクのある顧客に対しては重点的にサポートや提案を行います。

・セミナー、ワークショップの開催

セミナー(ウェビナー)やワークショップなど、複数顧客に対して直接的なコミュニケーションの場を設けることもあります。

ロータッチのアプローチで取り組むべき5つのポイント

ハイタッチ、テックタッチとは異なった進め方が必要なロータッチ、成果を生むために必要なポイントを5つ紹介します。

・セグメンテーション

ロータッチでは、複数への同時支援が中心となりますが、機械的な画一対応では顧客の成功や契約の継続を実現することは難しいでしょう。

そこで、顧客を属性や利用状況といったデータで分類し、それぞれのセグメントに対してある程度パーソナライズしたコミュニケーションを行い、より良い顧客体験を提供することが重要になります。

・ペルソナの想定

顧客を分類する際に重要になってくるのが、ペルソナ(ユーザー像)の概念です。

顧客がサービスに対してどのようなニーズを持ち、どのように利用するかといった想定をもとに、典型的なユーザーのパターンを把握することは、質の高いコミュニケーションにつながります。

具体的には、自社顧客のペルソナを3つほど想定し、それに当てはめる形でセグメンテーションをし、それぞれに最適化したコミュニケーションを行うのが良いでしょう。

・コミュニケーションの設計

顧客に対してどうコミュニケーションを取るかを具体的に設計しておくのも重要なポイントです。

単純に定期的なメール配信をするだけでは、開封せず見過ごされてしまうこともあるでしょう。メールを送るにしても、むやみに多くのインプットをするのではなく、利用状況や契約の状況、前述のセグメントなどをもとに、重要なタイミングでパーソナライズされた内容を送信することが重要です。

また、メール以外にも、サービスやアプリ内でオンラインユーザーにメッセージを送る、ユーザーコミュニティやフォーラムを設営するなど、多角的なコミュニケーションを取ることで効果が向上するでしょう。

・カスタマージャーニーの策定

顧客がサービスの利用をはじめてからの一連のプロセスをカスタマージャーニーとして整理しておくことも、ロータッチにおいては不可欠です。

オンボーディング、利用促進、契約更新など、それぞれのポイントにおけるマイルストーンの設定、利用状況の分析方法、それに対するアクションを明確にすることで、支援の精度を高められます。

この際、前述のセグメントごとにカスタマージャーニーを設定しておくことができれば、より良い支援に繋がるでしょう。

・マーケティングとの連携

カスタマーサクセス、中でもロータッチは、実はマーケティングと親和性が高い領域です。

複数顧客の分類や管理、それぞれに最適化したコミュニケーションの設計などは、マーケティング分野が豊富に持っているノウハウです。ロータッチにそれを取り入れることができれば、より効果的な支援が可能になるでしょう。

また、既存顧客へのリテンションマーケティングや、LTVベースのマーケティングなどの分野は、カスタマーサクセスと協力することで効果をあげられることもあり、両者が連携することは事業全体に大きなメリットがあるのです。

なぜロータッチにマーケティング視点が必要なのか

ロータッチにマーケティングの視点を持ち込むことの重要性について、さらに詳しく見ていきましょう。

リテンションマーケティングとの相互作用

マーケティングの中でも、すでに契約を行っている既存顧客に対する活動をリテンションマーケティングと言います。

「1:5の法則」と呼ばれるマーケティング用語が示す通り、新規顧客を獲得するには、既存顧客維持の5倍のコストがかかると言われ、いかに既存顧客との契約を継続するかが企業にとって重要な観点なのです。

そして、リテンションマーケティングにおいては、顧客のエンゲージメント(愛着、思い入れ)を焦点にして、ニーズの把握、それに合わせたサービスや製品の情報のインプットといった活動を行います。

これはロイヤルティを重視したカスタマーサクセスの活動と目的を一つにしており、両者がその考えを共有し、連携することで、どちらにもメリットのある取り組みになるのです。

マーケティングのスキルセットが効果を発揮する

前述の通り、ロータッチの支援においては、顧客を適切に分類、管理し、それぞれに最適化したコミュニケーションをとっていくことが重要になり、これが顧客のエンゲージメント、ロイヤルティを高めることにつながります。

その点で、マーケティング分野には、MAツールを用いた顧客管理や、効率的なコミュニケーションチャネルの設計、カスタマージャーニーの策定といったノウハウが豊富にあり、まさにロータッチにおいて必要なスキルセットを持っていると言えるのです。

カスタマーサクセスにおいては、カスタマーサポートやセールスといったバックグラウンドを持った人材が中心となることが多いですが、上記のようなマーケティングのスキルセットを持った人材を登用することができれば、特にロータッチおいて、より効果的な支援を提供することに繋がるでしょう。

まとめ 

今回は、カスタマーサクセスのタッチモデルのうち、ロータッチについて解説しました。多くの顧客の成功を実現するために不可欠なロータッチの支援ですが、ハイタッチやテックタッチと比べて、顧客のセグメンテーションやコミュニケーションの設計など、やや毛色の異なるノウハウやスキルが必要になってきます。

そして、マーケティング分野にはそうしたノウハウが豊富に存在しており、その視点を取り入れ、互いに連携することは、双方に大きなメリットをもたらし、カスタマーサクセスの価値を向上することに繋がるでしょう。

 

Topics: ロータッチ, カスタマーサクセス

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