カスタマーサクセスの「青本」とは?
カスタマーサクセスの関連書として、赤本ならぬ「青本」というものが存在します。
日本語の正式名称は「カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則」ですが、表紙が青いので「青本」と呼ばれています。
この青本は、「ゲインサイト(Gainsight)」というカスタマーサクセスソフトウェアのリーディング企業が執筆した、カスタマーサクセスのバイブル的な書籍です。
ゲインサイトはアメリカのサンフランシスコに本社を構える、2009年に設立された会社です。
ゲインサイトは、カスタマーサクセスにおける「ヘルススコア」という概念を考えた会社でもあります。
カスタマーサクセスを実施する上で「お客さんが成功しているかどうか」を計測するために、例えば「お客様がどのぐらい製品を利用しているのか」「メールやイベントに反応しているのか」を見ていく必要があります。
それらお客様の行動を可視化し、スコアリングする「ヘルススコア」を一番最初にやり始めたのがゲインサイトです。
カスタマーサクセスの「青本」で最も重要なこと
本のタイトルにもなっている「カスタマーサクセス10の原則」。
本書では、「カスタマーサクセスを実施する上で大事な原則」が10個まとまっています。
この「10の原則」が最初に作られたのは2013年ごろですが、既に10年ほど経過しています。
ゲインサイトでは直近、この10の原則を「新・カスタマーサクセス 10の原則」という形でリニューアルしており、今カスタマーサクセスに携わっている方や、勉強している方にとっても、新10の原則を読んで「ああ、これ確かに大事だな」と思ってもらえるはずです。
<「新・カスタマーサクセス 10の原則」関連記事>
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新10の原則、どんな点が大きく変わった?
「新10の原則」は、カスタマーサクセスの最近のトレンドを反映した内容になっています。
一例を挙げると、「カスタマーサクセスOps(CSOps)」が新しく追加されていることが挙げられます。
「CSOps」とはカスタマーサクセスのオペレーション支援のことを指しており、
カスタマーサクセス組織が効果的・効率的に運営され、ビジネス戦略と目標をサポートするための一連のビジネス活動を行うプロセスです。
アメリカでは「PLG(Product Led Growth)」という概念が流行っていますが、
この「新10の原則」では、PLGの考え方を元に「プロダクトを中心にカスタマーサクセスを行っていこう」という概念、あるいは「プロダクトの中でカスタマーサクセスを行うべき」といった概念も含まれています。
このように、10年前にはなかった概念が追加され、アップデートされているのが「カスタマーサクセス 新・10の原則」です。
旧10の原則については「古くなったので忘れる」というよりは、「古い概念をCSの中でも大事にしつつ、新しいものを大事にしていこう」という意識が大切です。
実際に、ヘルススコアの概念等、旧10の原則から踏襲された概念も残っています。
「新/旧 10の原則」の中で重要な概念
「(旧)10の原則」の原則で特に重要なもの:「Time to Valueを追求する」
旧10の原則はどれも重要な概念ですが、その中でも特に重要なものを選ぶとすると、8の原則の「Time to Valueを追求する」でしょう。
カスタマーサクセスを行う上で、価値を提供しようとするのは皆さん当たり前にやっていますが、「時間軸の意識」を持っていない方がまだまだ多いと言えます。
お客様からすると「なるべく短い時間」「なるべく早い段階」でうまく行った方が良いはずで、「お客様が早く成功するためにいかに体験立ったカスタマーサクセスを、スピーディーに提供できるか」が重要だと考えています。
「(新)10の原則」の原則で特に重要なもの:「お客様のコミットメントが重要」
新10の原則だと4番「お客様のコミットメントが重要」が特に重要です。
カスタマーサクセスの仕事をしていると、「企業側が、お客様に製品やサービスを提供しなければ」という考え方がどうしても強くなってしまいます。
「お客様のコミットメントを引き出す」という考え方を持つことで、ただ企業が頑張るだけではなく、お客様にも頑張ってもらう必要があります。
その意味では旧10の原則にはなかった新しい考え方と言えるでしょう。
「青本」はカスタマーサクセスのバイブル的な存在
青本は日本でもアメリカでも一番売れている本です。アメリカでもカスタマーサクセスの関連本はまだ数多くはなく、アメリカでも10冊ぐらいしか発行されていません。
日本でもせいぜい3〜4冊ぐらいしか発行されていないと思われます。
その中でこのカスタマーサクセスの「青本」は、他のカスタマーサクセス関連本よりも先行して出版された本であるため、カスタマーサクセス業界においてバイブル的な扱いとなっているのです。
世界各国におけるカスタマーサクセスの広がり
カスタマーサクセスはアメリカが先行し、日本が追従しているというイメージを持っている方も多くいらっしゃると思いますが、カスタマーサクセスの考え方はヨーロッパや東南アジアでも注目されています。
カスタマーサクセスツールを扱っている会社は、日本でも数社ありますがヨーロッパやインドにも存在します。
例えばインドには「CustomerSuccessBox」という会社があります。基本は「国内版」「英語版」という形で2つのバージョンを提供していることが多いですが、世界中にBtoBソフトウェアは存在するので、まずは自国へのサービスを中心に提供しつつ、その後英語版の提供と共にアメリカにも進出する、というケースも多くあります。
中国でもBtoBベンダーがCSの考えを取り入れている、という話もありますので、カスタマーサクセスの考え方は世界的に広まっていると言えるでしょう。
カスタマーサクセスの考え方は、今やSaaS(Software as a Serviceの略で、クラウド上で提供されるサービス、ここではSaaSを扱う企業のことを指しています)だけでなく色々な会社が取り入れています。
まとめ
カスタマーサクセスの「青本」。
青本では、カスタマーサクセスを行う上で重要な概念が「(旧)10の原則」としてまとめられており、今でもカスタマーサクセス業界に携わる方のバイブル的存在となっています。
カスタマーサクセスの勉強を始めた方、これからカスタマーサクセスの業務を開始する方にとっても必読の1冊と言えます。
また、2021年に発表された「新 10の原則」では、カスタマーサクセスを取り巻くさまざまなビジネス環境の変化も考慮しながら、新しい概念も追加されアップデートされています。
新・旧合わせると「20」の原則がありますが、まずはそれぞれの概念をインプットしながら、カスタマーサクセスを実施する上で重要な考え方を身につけていきましょう。