今回も、ゲストに株式会社リックテレコム・月刊「コールセンタージャパン」編集部の編集長・矢島 竜児 様をお迎えし、
Openpage代表・藤島との対談形式でお送りします。
今回は月刊「コールセンタージャパン」という雑誌について、深く掘り下げていきます。
【過去の対談記事】
■【混乱】カスタマーサポートとカスタマーサクセスの違いって?
■【知りたい】カスタマーサポート部門が売上に貢献する方法とは?
創刊当初のキーワードは「コンピュータテレフォニーインテーグレーション」
藤島:
雑誌「コールセンタージャパン」の発刊はいつ頃なのでしょうか?
矢島:
1998年10月です。
発刊当時は名称が現在と異なり、「コンピュータテレフォニー」という名称でした。
「コンピュータテレフォニー」は「コンピュータテレフォニーインテグレーション(CTI))」というコールセンターの基盤技術の名称です。
簡単に言えば、電話がかかってきた時に、電話をかけてきた相手の情報が表示されると思いますが、その基盤技術こそが「CTI」なのです。
当時は非常に画期的な技術であり、その技術を利用してビジネスやコミュニケーションを効率化していきましょう、
ということでCTIという領域が拡大していきました。
コールセンターはCTIという技術の活用先の1つに過ぎなかったのですが、
最終的に最もCTIの利用価値が高かったのがコールセンターだったため、
コールセンター向けの情報量がどんどん多くなっていきました。
1998年の段階においても、すでにコールセンターは多数存在していました。
そもそも通信販売の受注センターははるか昔から存在していましたし、
テレフォンバンキングという、電話を使った振り込みの手配や残高紹介を行う機能が96年に日本で初めて運用を開始されましたが、
そのバックボーンにあったのもこの「CTI」技術なのです。
そのタイミングで、コールセンターがどんどん大きくなっていき、
その流れに乗っかって「コンピュータテレフォニー」という雑誌も出てきたわけです。
藤島:
カスタマーサクセスに携わっている方だと20代前半の方もいらっしゃると思いますので、
そういった方は1998年だとそもそも生まれてないですね(笑)。
CTIの技術は、身近なところだと携帯電話の「発信者通知」ですかね。
矢島:
携帯電話での発信者通知は発信者の名前と電話番号ぐらいしか表示されませんが、
コールセンターの場合は、過去に購入した商品や金額、住所等の顧客情報がオペレーターの画面に表示されています。
当時はこうした技術がまさに画期的だったのです。
藤島:
電話にコンピュータとテクノロジーが組み込まれていったわけですね。
そこからカスタマーサポート職種のようなところでも、「コールセンタージャパン」はうまくはまっていったわけですね。
矢島:
そうですね。
「コールセンタージャパン」は最初こそ技術情報誌だったわけですが、
コールセンターやカスタマーサポートに従事する読者の方が増えるに従って、マネジメント情報誌に性格を変えていったのです。
雑誌としての性格が変わった上で、では雑誌名をどうするかという議論はずっと行われてきたのですが、
定着した名前を変えるのはなかなか勇気がいることで、結局「コンピュータテレフォニー」という名称は2016年まで引っ張りました。
2016年からは現在の「コールセンタージャパン」という名称に変更しています。
藤島:
2016年ということは結構最近なのですね。
矢島:
そうなんです。
コールセンターという読者層が拡大しているということは、コールセンターの数が増えているということであり、
「24年間そういった方達に読んでもらうための情報を提供し続けている」ということですね。
カスタマーサクセスはカスタマーサポートから学べる部分が沢山ある!
藤島:
コールセンタージャパンで取り上げている直近のトレンド情報としては、
どのようなものがあるのでしょうか。
矢島:
この10年ちょっと、大きくは変わっていません。
1つは、「カスタマーエクスペリエンス(顧客体験・CX)を向上するための1つの機能として、コールセンターが果たすべき役割は何か」ということです。
もう1つは、「オムニチャネル」。
電話だけではなく、Webフォームやメールにプラスして、チャットやLINE等、さまざまなチャネルを使ったカスタマーサポートを実践する。
そのための情報を提供しています。
藤島:
カスタマーサポートとカスタマーサクセスを比べると、サポートの方が歴史が長いので、
「技術面においてはカスタマーサポートの方がはるかに進んでいる」という印象を受けますね。
オムニチャネルやチャットbot活用といった部分はカスタマーサクセス側ではあまり取り入れられていません。
ここはカスタマーサクセスがサポートの取り組みをみつつ、
どんな技術の変遷があり、どんなものが使われているのかは学ぶところが多いなと思っています。
矢島:
カスタマーサクセス領域では「テックタッチ」という言葉も使われていますが、
僕らからみると「結構古いネタ」に見えています。
サポートの世界でもセルフサービスや自己解決手段という形でFAQの構築・運用・最適化からチャットボットへ進化したり。
コールセンターは今や、「Voiceボット」という音声を使ったボットにも踏み込もうとしています。
藤島:
テックタッチはWeb画面を用いたコミュニケーションですが、
カスタマーサポートではチャットで自動的に対応していますし、FAQですぐに問題解決できるようなコンテンツを用意しています。
カスタマーサクセスと比べてもすごく進んでいると言えますね。
カスタマーサポートの技術的な製品とカスタマーサクセスの製品を市場規模で比べると、
10〜15倍ぐらいは(カスタマーサポートの方が)大きいです。
そのため、技術の進化もカスタマーサポートの方が先で、
それに倣う形でサクセスも取り入れていく、という流れになるのではと考えています。
「カスタマーサクセス部門の責任者のポジションにカスタマーサポート出身の方が就任する」というケースも最近目にすることが増えてきました。
こういった方はテックタッチ・ハイタッチのどちらも熟知されており、
例えば、テックタッチであればFAQシステムの導入プロジェクトはもちろん経験されているので、
その経験を生かしてカスタマーサクセスで活躍する、ということは今後のトレンドとしても出てくるかなと思っています。
カスタマーサポートからカスタマーサクセスが学ぶ、ということはもっと進んでいくだろうなと感じています。
私たちOpenpageとコールセンタージャパン様とで一緒に行う新しい企画は、
カスタマーサクセスとサポートの交わり、というテーマになると思いますが、
雑誌自体は「サポート」メインになると思いつつ、
カスタマーサクセスの方が読むことで「こういうことも勉強しなきゃいけないんだな」と学ぶいいきっかけになるといいなと思っています。
人手不足時代に、顧客体験を高めるためには?
矢島:
使えるテクノロジーやオペレーションの手法はたくさんあります。
今コールセンターは深刻な人手不足と言われています。
カスタマーサクセス側の人たちも、今でこそ求人は沢山ありますが、そのうちおそらく人手不足に陥ると思います。
そこで、本格的にテックタッチ・ハイタッチ・ロータッチといった分類をしていくと、
「それBPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)でよくない?」という領域が必ず出てくると思います。
ビジネスはスケールすると、BPOを活用しないとスケールできない領域が必ず出てくると思うのです。
こういった情報を得る意味でも、「コールセンタージャパン」という雑誌を通じて、
「サポートとサクセスのハブ」としての機能を果たしていきたいと思っています。
藤島:
カスタマーサクセスの機能を持っている会社でBPOを活用している会社はほとんどないと思います。
BPOを活用している会社は、テレビCMを打っていたり等有名で、BPOが得意な会社が多いですね。まだまだ「内製主義」がほとんどです。
とはいえ、カスタマーサポートと同じくカスタマーサクセスも人材難に必ず陥ると思っており、
カスタマーサポートの技術的トレンドは人材難という課題を克服するために進化し続けている側面があると思っていますので、
「人手不足の中でどのように顧客体験を作っていくのか」がサポートもサクセスもある程度共通しているのかなと思っています。
矢島:
大きなキーワードで言えば両方「カスタマーエクスペリエンス」だと思っています。
その機能として、サポートやサクセス、コールセンター、営業やマーケティングがある、と。
そういった組織構造がもっとも理想なのかなと思います。