近年、ユーザーコミュニティを活用したマーケティング手法として「コミュニティマーケティング」が注目を集めています。
ユーザー同士のつながりを強化することによって新たなユーザーを生む取り組みは、マーケティング手法としてだけでなくカスタマーサクセスにとっても有用ですが、安易な立ち上げには注意が必要です。
効果を出すまでのハードルが高く、その前にまず取り組むべき課題も存在します。カスタマーサクセスの充実を考えるのであれば、まずは支援の基盤を固めることを優先しましょう。
コミュニティマーケティングとは
そもそも、コミュニティマーケティングとはどんなものなのでしょうか。
一般的なマーケティングは、Web広告やSNSなどを通じて企業からユーザーにアプローチするというもの。対してコミュニティマーケティングは、既存顧客を通じてユーザーからユーザーへのアプローチで獲得を目指すという手法です。
オンライン/オフラインで既存顧客を中心としたコミュニティを作り、つながりや愛着によってブランドへのロイヤルティを高めて「ファン」になってもらうことで、自発的な他社への紹介や情報発信を期待できます。
口コミの効果は非常に大きいため、うまく運用すれば成果が期待できますが、実際の運用にはデメリットや超えるべきハードルがあることには注意が必要です。
コミュニティマーケティングのメリット
コミュニティマーケティングを実施するメリットについて、さらに詳しく見ていきましょう。
ロイヤルティの向上・アドボカシー獲得
コミュニティマーケティングの最大のメリットは、やはり既存顧客のロイヤルティ向上と、それによるアドボカシー(支持/代弁)の獲得です。
コミュニティでの交流を重ねることで、人と人/人とブランドの愛着やつながりといった感情を強化できます。こうした感情はロイヤルティの向上につながり、解約防止や契約更新をもたらします。
また、ロイヤルティの高い顧客は「ファン」となり、企業に代わって口コミやSNSで他社や潜在的なユーザーへとおすすめをしてくれるため、新規顧客の獲得が期待できるのです。
顧客の生の声を拾える
カスタマーサクセスの目線で言えば、コミュニティマーケティングにはさらなるメリットが存在します。
コミュニティでの交流の中では、普段の支援と比べてより距離の近いやりとりができるため、より顧客の生の声を聞きやすいという特徴があります。
サービスに対する率直な不満や課題は顧客体験に直結したクリティカルな内容であることが多く、支援の方法やプロダクトの機能面での改善に役立ちます。
コミュニティマーケティングのデメリット
次に、コミュニティマーケティング実施のデメリットについても考えてみましょう。
リファラルでの顧客獲得の難易度は高い
コミュニティマーケティングのメリットであるリファラルでの顧客獲得が、実際には難易度が高いことには注意が必要です。
ToBの場合、「他社におすすめする」という行為のハードルはかなり高く、コミュニティがよほど成熟していなければそこまでの熱量を顧客に持たせることは難しいでしょう。
コミュニティの活動や各社の取り組みをSNSで発信して間接的に顧客獲得に役立てることは可能ですが、成功事例などの情報発信による獲得とさほど効果は変わりません。
一見して魅力的なコミュニティマーケティングですが、成果を出す難しさは理解しておきましょう。
成果が出るまでのリードタイムが長い
仮にうまく運用できたとしても、成果が出るまでに時間がかかることもデメリットのひとつと言えます。
コミュニティを立ち上げてから、参加者が増え、取り組みが軌道に乗るまで、さらにはロイヤルティやブランド価値の向上、顧客獲得といった目標が達成されるまでには、半年〜数年とある程度長い時間がかかります。
その間には当然大きなコミットメントが求められ、リソースを割く必要があることを考えると、ある程度余裕のあるチームや組織でなければ実施は難しいでしょう。
独自のノウハウが必要
コミュニティマーケティングの運営には、独自のノウハウが必要とされます。
ユーザー会の管理運営、SNSの運用、顧客とのコミュニケーション、見込み顧客のセールスへの繋ぎ込みなど、カスタマーサクセスとマーケティング双方にまたがったスキルがなければなりません。
アメリカではそうしたスキルセットを持ったコミュニティマネージャーというスペシャリストも出てきていはいますが、日本にはまだまだ数が少なく、適した人材をアサインする難しさもあります。
コミュニティマーケティングを実施する前に
メリットもあるもののハードルが高いコミュニティマーケティング、立ち上げる前にカスタマーサクセスが考えておくべきことは何でしょうか。
まずは支援の充実を
コミュニティマーケティングの実施はリードタイムが長く、独特のノウハウも必要になるため、カスタマーサクセスの取り組みとしては優先順位が高いとは言えません。
特に立ち上げたばかり、規模が小さいチームにとっては、まずは支援の支援を充実させることを優先しましょう。
イメージとしては、まずはハイタッチ支援でカスタマーサクセスが顧客にサービスの価値を伝え、次にロータッチ・テックタッチでそれをツールやWebコンテンツに移し替えていき、その先に、コミュニティで顧客同士が伝えあうという状態を作り上げるのが理想的です。
【参考記事】カスタマーサクセスのハイタッチ・ロータッチ・テックタッチとは?それぞれの役割も解説
実施するならあくまで顧客支援の延長として
実際にコミュニティを立ち上げるのであれば、まずは既存顧客への支援の一環として始めるのが良いでしょう。
マーケティングとしての側面は意識せず、単にセミナーやユーザー同士の勉強会、情報交換会など、個々に顧客が必要とする施策を実施します。
顧客の役に立ち、参加したいと思える施策を積み上げていくうちに、コミュニティが形成され、少しずつロイヤルティやブランド価値の向上が実現していくことを理解しましょう。
【参考】コミュニティマーケティングの成功・失敗例
参考として、コミュニティマーケティングでの成功・失敗の事例を紹介します。
【成功例】ハーレーダビッドソンのオーナーズグループ
コミュニティマーケティングの先駆けとして有名なのが、ハーレーダビッドソンの取り組みです。
現在では世界トップのバイクブランドとなったハーレーですが、1980年代には業績が悪化し経営危機に。そこで、83年にオーナーズグループ(HOG)を立ち上げました。
各地域の店舗に直結したオフラインのコミュニティを組織し、バイク好きのオーナーが集える場所を提供。バイク好きのつながりがブランドへの愛着をよび、長い時間をかけて110万人以上の会員を抱えるまでに成長しました。
【失敗例】盛り上がらない、成果を優先する、誤ったKPI…
個別の事例ではありませんが、コミュニティマーケティングでの失敗例は似通ったものが多く、以下のような過ちを犯しているケースが大半です。
・コミュニティが盛り上がらない
コミュニティの成功はあくまで顧客自身の熱量によるもの。企業側が一方的に情報伝達を行っていると、ロイヤルティの向上はおろか、モチベーションが低下してコミュニティ自体が立ち行かなくなってしまう可能性もあります。
・成果を優先してしまう
コミュニティが盛り上がっていない段階でアップセル・クロスセルやリファラルを期待しても、まず成果は出ません。それどころか、不信感に繋がる可能性もあります。まずは活気のあるコミュニティを形成することを目標にしましょう。
・誤ったKPI
上記と関連して、コミュニティマーケティングの目標設定を誤っているケースも多くみられます。アンケートやNPS、顧客のアクション数でモチベーションの変化を見るのが初期段階では適切ですが、売り上げに直結した数値や単なる参加者数などをKPIにおいてしまうのです。
まとめ
カスタマーサクセスとも関係の深いコミュニティマーケティングは、うまく運用すればロイヤルティやブランド価値の向上、新たな顧客の獲得が期待できるメリットの大きな取り組みです。
一方で、成果を出すためのハードルは高く、リードタイムが長いことや独特なノウハウが必要とされることにも注意が必要です。
また、高いコミットメントも求められるため、カスタマーサクセスにとっては必ずしも優先順位の高い取り組みとは言えません。
まずはハイタッチ支援の徹底やロータッチ・テックタッチの仕組み化などで基盤を固めることを考えましょう。