カスタマーサクセスにおける「最高位の役職」と言えば、
CCO:チーフカスタマーオフィサーですよね。
とはいえ、CCOを設置している日本企業はまだまだそう多くないため、
CCOの役割や具体的な仕事内容についてはイメージしづらいのではないでしょうか。
今回は、株式会社ユーザベース INITIAL事業にて、
まさに「CCO」の役職を務めていらっしゃる大沢 遼平さんにお越しいただき、
openpage代表・藤島との対談形式でお送りします。
(以下、敬称略)
CCO(チーフカスタマーオフィサー)は「CSのスキルセットを総動員して、お客様に関する意思決定」を担う役職
藤島:
大沢さんは前回の対談以来、ご出世されてCCOになられたと拝見したので、
これは取材しなければ、ということで今回お越しいただきました。
CCOはどんな感じでしょうか。
大沢:
皆さんがイメージするものと合っているか分からないというか、
皆さんはもしかしたらイメージもされていないかもしれませんが・・・
CCO(チーフカスタマーオフィサー)は「最高顧客責任者」と言われている職種です。
そのため、お客様の事を一番考え、
「お客様にとって一番良い物はなにか?」についての意思決定をする役職です。
その意味ではすごく面白く、「今までと180度変わった」とまでは行かないですが、
CCOとしてやる事も増えましたし、元々お客様のことは大好きだったのが、
CCOになって「さらに何かギブ出来るのではないか?」ということを考え始めています。
藤島:
なるほど。
アメリカではCCOが、カスタマーサクセスの最高職位とも位置付けられており、
人によっては生々しい話では年収2500〜3000万を貰っているCCOも出始めているようです。
それだけ、カスタマーサクセスの会社における重要度合いが上がってきたのではないでしょうか。大沢さんが考える、「CCOで求められる役割」とは一体どんなものでしょうか。
大沢:
会社としてCCOに求められている役割は大きく3つあります。
1点目に「ユーザーの満足度を上げる」こと。
2点目に、私たちは「INITIAL」というサービスを提供していますが、
「INITIALを活用できていると思ってくれているお客様を増やす」こと。
3点目に、そうしたお客様がずっと使い続けられる・維持できる体制を作ること。
これらを一所懸命に考えて実行することが、まずは役割として求められているのではないかと思っています。
最後は「決める」ということが仕事になるので「AでもBでも満足度は上がります。でも、リソースは1個しか出来ません。どっちを取りますか?」となったときに、
その「どちらか」を決める仕事になります。
藤島:
CCOになられて、普段の仕事内容は何か変化がありましたか。
大沢:
仕事内容は、まず「範囲が増えた」ということはあります。
カスタマーサクセスは引き続き、もちろんやっています。
しかし、実務の領域は少し減り「意思決定」のほうに時間を費やすことが増えました。
具体的にはより広範囲に「事業として・顧客の責任者として何をすべきなのか?」ということについて考えることです。
そのため売上も見ますし、プロダクトも見ますし、コンテンツも見ます。
全てを横軸で見た状態で「カスタマーサクセスは何をしなければいけないのか」を決めていっています。
藤島:
カスタマーサクセスの「担当(実務)」とCCOが違うところは、
CCOには「カスタマーサクセスのスキルセットや考え方を持ちつつ、経営全般の意思決定に取り組む」ということが求められているんですね。
大沢:
まさにそうです。
CCOは、チャーン防止やエクスパンションのために全体を俯瞰し動く仕事
藤島:
CCOは、売上やプロダクト開発にどのように関わっているのでしょうか。
大沢:
例えば売上で言えば、
「年末までに何千万円・何億円」といった売上目標があるとします。
これを達成するためには、新規の売上を伸ばすのはもちろん、
いかに解約されずに期末を迎えられるか、も非常に重要になります。
解約されないような状態を作りながら、エクスパンションをしていくためにすべきことを考える。
さらに営業側のリードも供給できないか、ということまで考えています。
藤島:
営業は営業の責任者の方がいらっしゃるのですか?
大沢:
はい。
藤島:
CCOとしては、
エクスパンションのMRRやチャーンレート等、数字でコミットメントを求められる形でしょうか。
大沢:
そうですね。
例えばCSのマネージャークラスであれば、「この数字を追ってくれ」と上から目標が降ってきて、その数値が達成出来たか否かで評価されると思います。
しかし、CCOの場合は、チャーンレート1つ、といった指標・目標ではなく、「全部」を管理しなければなりません。
全体がきちんと出来たかどうか、その上で最終的な指標を達成できたか、で評価されるので、
1つの指標にこだわらず、売上や顧客満足度等さまざまな指標を総合的に追いかけています。
藤島:
INITIAL事業のCCOでいらっしゃるということは、
事業責任者のような事業全体を見ていきつつ、その中で特にCSにフォーカスを当てられている形でしょうか。
大沢:
そうですね。
藤島:
なるほど。
私もCSマネージャーとCCOの業務として、
実際の現場でどのような違いが出るんだろう、ということはまさに気になっていたテーマでした。
具体的には会議体や日々の業務等でさまざまな違いが生じるのかなとは思っていましたが、
今の話を聞くと守備範囲や見ている指標も全く違うのだなと痛感しました。
レポートラインは事業責任者、あるいは全社役員の方になられるのでしょうか。
大沢:
そうですね。
UZABASEでは「事業CEO」がいるので、彼にレポーティングするイメージです。
弊社にはCEO・CCO・CROがそれぞれいるものの、役割的には「並列」で、
それぞれの担当領域にコミットメントしています。
「CCO」と「CRO」の違いとは?
藤島:
さらに踏み込んで聞いてみたかったのが、「CCOとCROの違いは何か?」という点です。
私自身も突っ込まることが増えており、これは結構、各社違うような気がしていて。
大沢さんの所では、どのように区別されていますか。
大沢:
そうですね。非常に難しい問いだとは思っています。
結局、CCOもCROも売上は見ています。ただ立場が違うだけ。
CCOは「市場がどうなっていくべきか」を作っていく役割ですので、
「こんなお客様がいて、こんな方々が満足になって、さらにこんな市場も取れたらこんな世界観が作れるよね」といったビジョンを描いて作っていく必要がある。
一方CROは、どちらかといえば「事業を作る」ところがメインであり、
「今のプロダクトでどれぐらい売れるのか、さらに売るためにどのぐらいのマーケティングリソースを投下するのか、提案方法はどうするのか、どうすればより多くのお客様にリーチできるのか」という点にコミットしています。
こうしてみるとCCO・CROともにやっていることはそんなに変わらないのですが、
やはりフォーカスするポイントが違うのかなと認識しています。
藤島:
私もCCOとCROの違いを調べる中で、
おっしゃっていただいたようにCROはより「定量的なスキルセット」を持っている人が務めていらっしゃるイメージがあります。具体的には、企画やOps的な要素も持っているような方です。
CCOはもう少し定性的、つまり「カスタマーサクセスの理想の姿を実現しよう」と邁進している印象があります。
既存のお客様だけではなく、新規のお客様を含めたカスタマーサクセスの全体像や、マーケットにおける立ち位置、事業のビジョン等を描くことを求められているのだな、ということを、
大沢さんのお話をお伺いしながら感じました。
ちなみに、大沢さんはどのような経緯でCCOになられたのでしょうか?
また、どんな人がCCOになれると思いますか。
大沢:
正直「分からない」というのが答えです。
私自身「CCOになるために頑張ってきた」という意識は全くありません。
ユーザーベースのバリューのうちの1つに「ユーザーの理想から始める」というバリューがあるのですが、
このバリューに沿ってひたすら取り組みを続けていました。
「ユーザーが本当に喜ぶのは、どういう提案された時に喜ぶのだろう」
「どんな風にサポートをしてあげたら、ありがとうと言ってもらえるか」
といったことを意識しながら、そのための取り組みを愚直にやった結果として、
たまたまCCOというポジションが自分に合っていた、という経緯です。
そのため「どんな人がCCOになれるのか」といった話だと、
少なくとも「お客様の事を考えることが苦ではない人」。
これは要素として必要だと思います。
自分の接しているお客さんが好きなことは非常に重要です。
プラス、カスタマーサクセスは「会社の顔」になることも多いので、
「自分が所属している企業のバリューを体現出来ている人」もCCOになるための要素のうちの1つだとは思っています。
藤島:
確かに、CCOはある意味「カスタマーサクセスの広告塔」的な存在になる方だと思うので、それに伴った人格かどうか。
バリューの話もありましたが、「その会社らしさ」を表現しているかどうか、は非常に重要だと理解しました。
私自身はHR業界出身なので、組織設計の話も触れさせていただくと、
組織設計の際に、役職者が上に上がれば上がるほど「求められる時間軸」を長期的に設計している会社様が多い印象です。
おそらくCCOは、「半年先」といった短期の話よりも、1~3年等中長期の時間軸で考えることが求められるのではないかと思っています。
大沢さんも目の前の仕事をやりつつ、
周りの人から見ると、「大沢さんはもっと先の世界を見ているぞ」という印象を持たれていたのかな、とも思いました。
大沢:
どうですかね・・・。
おっしゃるようなことが自分の中で言語化されている訳でもなかったので・・・そういった印象を感じ取ってくれていたメンバーが周りに居たのかもしれないなとは思いますが、
でも、何となくお客様と接して「この事業はイケるぞ」という自信はありますよね。
藤島:
大沢さんが「将来、INITIAL事業がこうなるぞ」というのを1番真剣に考えた人の1人だろうということは、今日のお話を聞きながら感じたところです。