カスタマーサクセス責任者になったら考えるべき、CS部門の組織設計とは?

  • 公開日:2022年10月5日(水)

カスタマーサクセスが顧客の成功に伴走するためには、合理的な組織設計が欠かせません。

では、もしもあなたがカスタマーサクセス部門のトップになった場合、どのようにカスタマーサクセスを組織化すべきなのでしょうか。

この記事では、カスタマーサクセス組織に必要な役割、組織設計の例、組織化における重要なポイントなどを解説します。

カスタマーサクセスに必要な役割を整理しよう

カスタマーサクセスの組織を考えるうえでまず重要なのが、CS組織に必要な役割(機能)を整理することです。企業フェーズ、サービスの内容や支援の仕方などで変わるものの、基本的には以下の役割が中心になります。

  • カスタマーサクセス責任者(CCO/VP)

カスタマーサクセス部署全体のパフォーマンスに責任を持ち、経営レベルでの判断を行うほか、チームや部署の組織設計の中心にもなります。海外ではCCOやVPと呼ばれます。

  • CSM

顧客支援の中心となり、各顧客の成功に責任を負う役割です。アカウントごとの目標設定、ロードマップの策定、タスクの整理を含む顧客体験全体のマネジメントを行います。

  • CSM(オンボーディング担当)

新たに製品を使う顧客に対して、トレーニングや教育プログラムの提供を行い、スムーズに活用できるように手助けする役割です。このプロセスの成功が長期的な活用率やロイヤルティを大きく左右します。

  • CSM(運用/コンサルティング担当)

オンボーディングを終えた顧客に対して、定常的な運用の支援や、さらなる活用をうながすための積極的な提案を行います。長く活用してもらい、成功を実現するために重要な役割です。

  • カスタマーサポート

顧客の活用上の不満や操作の不明点に関する問い合わせに対応し、解決策を提示する役割。主に技術的な内容をカバーします。

  • テックタッチ、コンテンツ配信

デジタルツールやサイト、動画コンテンツを利用して1:nでの支援を行います。組織の規模が拡大し、顧客数が増えるほど重要度が増してくる役割です。

  • 契約更新/拡大(カスタマーセールス)

顧客の契約更新やアップセル・クロスセルを目指して提案や交渉を行う役割。顧客の要望を汲み取って、最適な契約内容や製品構成を提供します。

  • CSOps/イネーブルメント

部署全体のパフォーマンス・効率向上のために、システム設計やツール導入などを行う役割。顧客対応は行わず、主にバックオフィス業務をカバーします。

 

組織設計の例

必要な役割を整理できたら、それをチームに分けて組織化していきます。最適な形はサービスや企業フェーズによっても異なりますが、実際の組織設計におけるよくある形として以下のような例が挙げられます。

①:役割に沿った組織設計

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役割(機能)ごとにチームを切り分けるベーシックな組織設計の例です。

アカウント全体を管理するCSMをはじめとして、カスタマージャーニーの各ポイントにおける支援を行うオンボーディング、アダプション、運用/コンサルティングが支援の中心を担います。

さらに別軸で、コンテンツ配信を中心としたテックタッチを行うチームや、契約更新、アップセル/クロスセルを担当するチーム、部署全体の効果を最大化するためのOps/イネーブルメントチームなども加わります。

カスタマーサクセス立ち上げからある程度時間がたち、数十名以上の規模になったチームが組織設計をおこなう場合に参考にしやすい一般的な例です。

②:顧客の属性に合わせた組織設計

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企業規模や地域など、顧客の属性に合わせて支援チームを切り分けるパターンです。

この例では、エンタープライズ企業への支援チームをひとつつくり、中小企業支援は地域別にチームをつくっています。

①の例とは異なり、各支援チーム内でCSMやオンボーディング、運用、サポートなどの担当者をおくことになります。顧客の幅が広がってきたり、全国に規模が拡大した企業が属性に合わせた支援を行うのに適しています。

なお、顧客属性に関わらず共通の業務をおこなうテックタッチやOpsなどは独立して切り出すのが一般的です。

組織づくりのポイント

より効果的な組織を作るためには、気をつけるべきポイントがさらにいくつかあります。

顧客を中心に考えよう

カスタマーサクセスのゴールは顧客の成功です。

当然、組織づくりや運用においても「どうすれば顧客が成功できるか」を第一に考えて、顧客のニーズを満たし、より良い体験を提供する設計が必要とされます。

先ほど解説した、顧客を企業規模や業界、地域によってセグメンテーションし、それぞれの支援チームを切り出すという組織づくりもその一環と言えます。

セールスの下は理想的ではない

部署内の組織設計とは別に、社内におけるカスタマーサクセスの配置も重要です。

多くの日本企業では、カスタマーサクセスがセールスの下に従属する構造になっていますが、これは望ましくありません。

営業部門は新規顧客の獲得が目的であり、解約の防止やLTVの最大化、そして顧客の成功を最優先に活動するカスタマーサクセスとは目線が一致しないリスクがあるからです。

顧客体験に責任を負うCCO(顧客責任者)を設置するか、CEOの直下にカスタマーサクセスが位置するのが理想的です。

部署間の情報共有を忘れずに

チームを細分化するとどうしても連携がおろそかになってしまいがちですが、これを避けるためには、情報共有を密に行える仕組み作りも欠かせません。

カスタマージャーニーやSFAの情報、活用データなどを全チームが共有できる情報基盤を作り、目線を揃えることが有効です。

全チームが同じ情報を確認できる環境を作ることは、情報をパスするための余計な工数、待ち時間を削減できて効率化にもつながります。

常に改善し続ける

顧客の成功にとって最適な組織構造は、企業のフェーズに合わせて変化していくものです。

例えば、立ち上げ直後は役員や数人のメンバーがひとチームで全体をカバーするのが効率的ですが、メンバーが増えていくにしたがって、次第に各機能をチームとして切り出し、さらには顧客属性に合わせたチームを作っていくことになります。

全ての顧客に最高の体験を提供する顧客中心主義に沿って、チームの編成や切り分け、メンバーの配置を常に工夫しましょう。

まとめ

カスタマーサクセスが顧客に良質な体験を提供するためには、組織設計の最適化が欠かせません。

良い組織を作るためには、必要な役割(機能)を整理したうえで、それぞれを切り出してチーム化し、規模の拡大や顧客数の増加に合わせてさらに構造を変化させていくというやり方が有効です。

また、重要ポイントは他にもありますが、基本的には「顧客を第一に考える」を意識することで、結果的に良い組織へと変わっていくはずです。

Topics: カスタマーサクセス

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