今回は「カスタマーサクセスの経営価値」を題材に、
「数字を活用して、経営の観点でカスタマーサクセスを考えていくことが大事」というテーマで解説します。
「経営価値」ですのでカスタマーサクセスに関わるような経営者や部門長の方にもおすすめです。
カスタマーサクセスの経営価値(1):
「売り上げを拡大させながら契約を維持する」ことが重要
カスタマーサクセスはチャーンレートや契約内容が重要とよく言われますが、
カスタマーサクセスの「経営」的には、「チャーンを維持するだけ」ではダメで、
新規のお客様の契約をどんどん拡大していくことが重要です。
さらに言えば「拡大していく中で契約がちゃんと維持されていること」が重要なのです。
「新規契約が伸びていないのに、契約維持を頑張ってます」と言われることもあるのですが、
結論「儲かっていない」状態なのです。
もう少し深く考えると、「新規のお客様が増え続ける」状態は、取引するお客様の規模や業界とか、売り先のバリエーションが増えていく、
つまり様々な規模・業界の顧客への販売が広がる、ということです。
例えば、「元々はIT企業の一部の中小企業だけが使っている」状態だったのが、ある程度大きい会社でも使っていただけるようになる、といった状態です。
そうなると、これまで提供していた方法とは違うやり方でカスタマーサクセスとして支援をする必要が出てきます。
顧客の規模・業界が変わると、求められる機能やサービスも変わります。
その中でも、お客様に満足いただいて契約を維持してもらうために、
そしてお客様に解約されないように調整する役割がカスタマーサクセスには求められてくるのです。
また例えば、「新規顧客がめちゃくちゃ伸びているけども、毎月3%ぐらいのお客様が解約しています」というケースがあるとします。
新規顧客は年間20%伸びているけれども、月3%×12ヶ月で年36%の顧客が抜けていくことになってしまうため、トータルでは16%のマイナスとなり、売上は減少してしまっています。
要するに、「新規顧客の伸び率・成長率を高く、解約率は成長率よりも低くすることで、売上を伸ばしていく」というストーリーを作れるかが重要なのです。
このストーリーを作るための役割がカスタマーサクセスに求められる、ということが、まず経営的に一番重要な観点だと思います。
カスタマーサクセスの経営価値(2):
エクスパンション/アップセル/クロスセルが重要
SaaS企業やベンチャー企業では上場すると「利益率」が求められるようになります。
上場すると会社の企業価値が「営業利益 × PERの倍率」で決まるからです。
※PER=株価が「1株当たりの当期純利益」の何倍になっているかを示す指標
利益率を上げるためには「製品の単価」を上げて、「コスト」はなるべく下げることが重要です。
つまり、カスタマーサクセスの観点で考えると、
「単価を上げる」のであればカスタマーサクセスがクロスセル・アップセルしなければいけません。
プラス、基本的には「製品のオンボーディング・アダプション」のフェーズは、あくまでも契約の維持のためであって儲かっていませんので、
なるべく早く成功させ、契約のプランアップとか、他の製品の販売をしていかないと、カスタマーサクセスの売り上げは積み上がってきません。
そのため上場ベンチャーやSaaS企業のカスタマーサクセスでは、「利益率」が重要になってきます。
単価アップするためのクロスセル・アップセルをする仕組みは、
特に上場企業になるとカスタマーサクセスには強く求められていますし、投資活動も積極的にされています。
チャーンを防ぐだけではなく利益率が担保される形で、カスタマーサクセスの運営はなされるべきですし、
「カスタマーサクセスの利益を出す」ということは、カスタマーサクセスの観点で売上を上げ、コストを下げていかなければなりません。
カスタマーサクセスの経営価値(3):
「製品の改善による単価アップ」はマスト!
カスタマーサクセスが関わる製品やサービスは、
基本的に「BtoB」かつ「業務改善」に関わるツールであることが多いです。
お客様は、製品・サービスに払ったコスト・費用を使って「何かしら業務を改善」しているはずです。
お客様側の観点だと、こういった製品やサービスを使うことは「投資」そのものです。
売上を上げる、生産性を改善するといった理由や意図があって、その製品・サービスを使っているわけです。
その製品・サービスが非常に良いものであってカスタマーサクセスがうまくいっていれば、「もっとそれに投資しよう」と思ってもらえるはずですし、顧客側の投資金額も上がるはずです。
これは、カスタマーサクセスの側から考えれば「単価が上がる」ことそのものです。
この状態を作れていることがかなり重要で、
逆に言うと、どんなに「カスタマーサクセス頑張りました」「お客様から満足されてます」と言っても、「単価が上がってない=顧客側の投資金額が増えてない」ということです。
つまり、「追加の売上が生まれていないのに、カスタマーサクセスの人件費がかかってしまう」状態です。
厳しいことを言えば、カスタマーサクセスとして働くのであれば、お客様への提供価値や製品の導入価値をなるべく高くする工夫・努力が必要、ということです。
これらが高まれば、お客様の顧客業務効率が良くなり、お客様側で売上向上に繋がったり、コスト低減に繋がりますので、「さらに投資しよう」という意思決定に繋がりやすくなります。
「さらに投資しよう」と思ってもらうことが製品単価が上がることに繋がりますので、
カスタマーサクセスとしてはこの感覚を絶対に忘れてはいけません。
上場企業のSaaSベンチャー企業などでは、IRの中で「製品単価」を指標としてレポートするケースも多いのは、こうした理由からです。
単価が上がることは、経営的にも非常に重要な指標です。
カスタマーサクセスの取り組みをするのであれば、
自社の製品をより良くする、サービス内容を改善することで、お客様へのカスタマーサクセスとしての提供価値を高め、結果的に単価が上がる状態を作り出すことが必要です。