カスタマーサクセスとコンサルティングの違いは何か?

  • 公開日:2023年7月31日(月)

カスタマーサクセスベンダーopenpage代表/実践カスタマーサクセス著書の藤島誓也です。
ハイタッチのCSが、実質コンサルティングのようになってきています。
しかし、コンサルティングとは単価の考えや取引社数の違いがあるので、イコールではなく、カスタマーサクセスとは区別しないといけません。
この記事では、何が同じで、何が違うのか。また違いがあるうえで起こる課題や、openpageの考えなどを整理したいです。

カスタマーサクセスとコンサルティングの違い: 価格の違い

コンサルティングは基本的には人月単価計算です。
戦略、ITなどのコンサルティングは、プロジェクト推進のための必要工数を計算して、その工数×人月単価で計算することで価格をつけます。
コンサルティングの給料が高いと言われるのは、この人月単価が会社によっては相当の価格感だからです。
「ITコンサルティング 単価相場」と調べればざっくりの相場は月100〜200万円程度と出るでしょう。

ITの場合は、多くは、SAPやERPシステム、基幹システムの導入プロジェクトになります。
ERPや基幹システムは、会計、販売、物理、生産などを統合したシステムとなるので、導入難易度は高く、一定の期間と専門性がいるのです。

一方、SaaSのカスタマーサクセスは、基本は製品価格にインクルードされています。言い方を少し悪くすれば、顧客によっては製品のおまけのような立ち位置ではあります。
しかし、SaaS導入にあたってはカスタマーサクセスが担当としていたほうが格段に成功確率が高まるので、SaaS/クラウドビジネスをやっている会社はほぼ必ずカスタマーサクセス担当を置いています。

海外の相場としては、カスタマーサクセスコストはMRRの10%程度が適切とされています。仮に、ハイタッチ担当の給料が年収500万円とする。とすると、月のコストはざっくり40〜50万円。であれば、500万円以上のMRRをハイタッチとしては扱いたい、というのが簡単な計算として成り立ちます。

つまり、コンサルティングはあくまで自分自身の人間としての稼働で、月100〜200万円請求していますが、カスタマーサクセスは月500万円の請求をしながら、その10%程度(月50万円)が人間としての稼働、のようなイメージです。
たしかに、カスタマーサクセスと、SAPコンサルタントの年収は2倍近く差が出ることもあるので、おかしな数値ではありません。

カスタマーサクセスとコンサルティングの違い: 取引社数の違い

コンサルティングは人月稼働なので、極端な話、1社で自分の稼働をすべて取られるということもあり得ます。
会社にもよりますが、そこまで多くのプロジェクトを同時に持てるものではないでしょう。
例えば、人月単価100万円として、月50万円のプロジェクトを2件進めている、という話はよくあります。
そのため、1社に発生するドキュメントの量や、コミュニケーション量は多くなります。

カスタマーサクセスは、MRR500万円以上を1人で持つ、という話になりますが、このMRR500万は製品単価によって動き方が大きく変わってきます。
仮に月次単価が10万円の製品であれば50社担当を持つし、月時単価が50〜100万円であれば、5〜10社の担当を持つことになります。

コンサルタントが持つ2社に対して、カスタマーサクセスが50社持つとすれば、コミュニケーションのスタイルは大きく変わります。
1社あたりにかけられるコミュニケーションや提案料は当然減ります。そのため、ある程度提案内容のテンプレートや型を持ちながら、均等に(時には解約リスクや契約拡大可能性のある会社に時間を割くバランスを変えながら)対応します。

しかし、カスタマーサクセスが持つ担当会社数が5社となると、話はまた変わってきます。実際に大手企業向けの、データの持ち方が複雑だったり大量にあるようなSaaSであれば相応の単価になり、1社あたりにかけるべき工数も変わってくるのです。
仕事の感覚的には、月2社のコンサルティングに近付いていきます。ITコンサルティング程ではありませんが、一定のプロジェクトマネジメントが発生するのです。
ガントチャートを作って工程管理するカスタマーサクセスも多いでしょう。仕事のノウハウもカスタマーサクセスというよりはPMBOKのプロジェクト管理の内容に近くなっていきます。

そのため、取引単価が高いSaaS製品は、カスタマーサクセスの責任者からメンバークラスの中にITコンサルティング経験者が採用されることも増えています。

カスタマーサクセスとコンサルティングの違い: 提案内容の違い

コンサルティングは、基本的には顧客の業務フローに合わせてERPや基幹システムの構成を考えます。(もちろんプロジェクトによって異なることは承知のうえで…の発言です。)

SAPの日本代表の方は、日本企業は自社の業務にシステムを合わせようとし過ぎていると発信されていましたが、力関係上は仕方ない側面もあります。
ERPベンダー側としては、一部スクラッチ開発も発生することを念頭に、極力柔軟に顧客対応できるような製品設計にしていることが多いでしょう。

SaaSのカスタマーサクセスは、どちらかといえば自社が定義するSaaSの使い方/業務プロセスを顧客に提案していくことが多いです。
ただ、これは高単価の大手向けのクラウドサービスの場合は、ITコンサルティングのERPに考え方は近くなります。
Salesforceも、代表マークベニオフ氏の書籍であるクラウド誕生を読む限り、はじめはITスタートアップ向けにカスタマイズなしで売っていたところ、大手取引が増えるにつれてシステムの導入柔軟性を高めるような製品に変えていっているのが伺えます。

一方、単価の安いSaaSの場合は、そもそも顧客がその領域でITサービスを導入していないケースも多いです。そのため、新しい仕事術として顧客にSaaSを使った仕事の仕方を啓蒙していくような動きもカスタマーサクセスに求められるのです。

そもそも、SaaS/クラウドは、どちらかといえばSMB企業のほうが恩恵を受けやすいものです。なぜなら、大手企業は昔からSIerに数千万や数億円単位のシステムを発注する体力があったので仕事におけるIT活用が進められたが、中小企業はそもそもそんな資金余裕はなかったわけです。
しかし、これがサブスクリプション/安価のSaaS・クラウドサービスの形で利用できることによって、小さな企業でも仕事にITを導入できるようになりました。
ただ、単価が安い代わりに、カスタマーサクセスの担当は月50〜100社ほど持ってサポートします。
仮に月180時間働くとして、その1/50〜1/100なので、1社にかけられるのは月2〜3時間という計算になります。

openpageが注目した課題: 本来カスタマーサクセスはコンサルティングであるはずが、十分に顧客対応に時間を割けない

ただ、ここでカスタマーサクセス業務における問題になるのは、1社2〜3時間/月の対応時間で、SMBの顧客はSaaS/クラウド製品を使いこなすことが出来るのか?という話です。
また、大手企業であっても、ITコンサルティングほど対応工数を割けないので、1社に割ける時間は月18〜36時間(週5〜10時間)ほどになります。

製品によっては、顧客対応の時間が不足してしまい、現実的に本来やりたいカスタマーサクセスの支援が工数不足で難しいことが多いのが実態です。
特に急成長するSaaS企業は、どんどん機能数が増えるし、取引社数が増えていきます。CS育成により時間がかかるようになり、必要な採用要件も上がります。
つまり経年に連れて工数不足の懸念材料が増え、事業成長に対してカスタマーサクセスが追いつかないという構造になりやすいのです。

実際に、いまopenpageに駆け込みで来る会社が増えており、特徴は2つあります。
1つは、店舗向けなど、複数人に案内しなければならないVertical SaaSです。
社名はあまりお伝えしにくいのですが、資金調達を数十億円調達〜のような企業様でこそ、課題が深かったりします。つまり、案内工数が一定必要となるのに、製品単価が高く請求できないのです。しかし、複数人に製品案内フォローをしなければならないのでカスタマーサクセスの人的工数が負担としてのしかかります。

もう1つは、大手企業向けの提案が難しいHorizontal SaaS。専門性やPM力がITコンサルタントのようなものを求められますが、そんな人材をカスタマーサクセスで採用/育成するのが難しい。また顧客の期待値に対して割けられる工数に限界があります。顧客はITコンサルタントのノリで稼働してくれることを期待していますが、そんなリソースは割けません。こちらも、新規取引の伸びは構築ながら、カスタマーサクセスの責任者がヒヤヒヤしており、限界を感じてご相談頂くことが爆増しています。

前者は、ライトなコンサルティングを複数人にしなければならないという課題です。つまり、単価が高くない顧客にテックタッチをやらなければならないけれど実施が出来ていない課題感。
後者は、ヘビーなコンサルティングを、工数や組織力が足りないにも関わらず求められてしまっている課題です。こちらは、社数が少なければ出来ていたものの、顧客数と従業員数が増えたことでバランスが崩れてしまいかねない懸念から来るものです。

openpageの対応: カスタマーサクセスのコンサルティング力をデジタルの力でサポート

openpageはカスタマーサクセスのツールベンダーですので、カスタマーサクセスはもちろんのこと、ITコンサルティングやPM職の業務など徹底的に分析しました。スポーツのコーチングや、ホテルのコンシェルジュなど近接領域も研究しながら、カスタマーサクセスのコンサルティング力を高める方法を検討してきました。

そのうえで、企業向けのコンサルティングを、デジタルツールを使いながら、カスタマーサクセスライクに(つまり複数社に対して工数が少ない中で)対応できる機能を考案し続けて開発してきました。これは今もひたすらにやり続けています。
カスタマーサクセスの機能ですので、人の代わりに顧客案内する機能(テックタッチ )や、人の提案の向上や最大化に繋がる機能です。(ハイタッチ)

今もまだまだ満足しているわけではなく、製品開発とサービス改善はずっと続けており、企業に価値を提供するコンサルティングを実現する機能となると、終わりはないのかもしれません。

結論、カスタマーサクセスはほぼコンサルティングに近い仕事ではありますが、単価や社数の制約からそれをやりきれない課題が大きく存在します。
openpageもずっとその問題に向き合っていて、機能開発を続けており、成功事例も毎年増えてきました。

このようなブログ記事で成功ノウハウの発信は続けているのですが、必要な情報や取り組みは、個社の状況によって違うと思います。
同じように課題に感じていらっしゃる人は、弊社が共に課題に向き合い、一緒に考えますので、ぜひご相談いただきたいです。

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