openpage代表取締役の藤島です。2023年のカスタマーサクセスを振り返って、どのような出来事があったのか。重要な論点を解説します。
カスタマーサクセスをリードする「SaaS業界の不況」
2023年は、SaaS業界全体が低迷していた年でした。カスタマーサクセスを含むSaaS企業関連の職種においても、積極的な情報発信が大幅に減少した1年でした。カスタマーサクセスの始まりは、不況期の大手企業との取引を維持するために生まれたものでしたが、今回の不況では、取引維持だけでなく売上拡大(NRRの向上)が求められました。
現在、あらゆるものの価格が上昇しています。カスタマーサクセスも同様で、取引単価を引き上げる動きが間接的に求められた1年でした。経営陣からの説明は企業によって異なりますが、クロスセルやNRRの目標設定が急に重要視されるようになった企業が多いでしょう。
実際、多くのSaaS企業では、オンボーディングの工程を整えるその更に先の取り組みが進んでいます。次に注力するのは、アダプション後の工程(売上拡大)をハイタッチできめ細かく進めるシナリオの構築です。同時に、人手に頼っていたオンボーディングプロセスをテックタッチ化して効率化する必要も求められています。
「大手企業」のカスタマーサクセス参入
SaaS企業は不況の影響を受けて発信力が低下している一方で、実は大手企業はカスタマーサクセスへの投資を活発化させています。弊社openpageも、三菱地所やオプテージなどの超大手企業との取引が大幅に増え、大手企業におけるカスタマーサクセスの理論を学ぶ機会を得ました。
これらの大手企業は、DX戦略への投資に積極的です。DXには業務自体のデジタル化と事業そのもののデジタル化の2つがあります。大手企業の新規事業はほとんどがデジタル関連であり、toC市場でもtoB市場でも、カスタマーサクセスが重要な要素となります。
ただし、BtoB市場では製品はデジタルですが、実際のサポートは人的リソースによる支援が主流です。そして大手企業の場合、この人的リソースこそが強みです。自社の従業員の能力をカスタマーサクセスにどのように活かすか、うまく計画することが求められます。
大手企業には独自の文化や慣習が存在します。SaaS企業のカスタマーサクセスを一般的な考え方に沿って取り組むだけでなく、自社の業務や組織の特性を考慮しながら、強みを生かして取り組むことが重要です。
カスタマーサクセスから「DXコンサルティング」へ
大手企業は、業務のデジタル化(DX)が進んでおり、その影響からSaaS企業との取引拡大も好調です。弊社openpageにおいても、特に大手企業向けのエンタープライズ営業管理機能が人気でした。さらに、大手企業自体の営業DXにもニーズが増えました。
実際に弊社の商談を見てみると、今年の半数近くが「営業DX相談」という内容でした。これらの相談は、大手企業のDX戦略と密接に関わっています。SaaS企業では、デジタルセールスルーム(DSR)を活用した大手企業向け営業のデジタル管理が重要となっています。また、openpageでは、大手企業の営業組織全体のDXコンサルティングも行ってきました。
そのため、今年は大手企業のDXについての情報収集を重ねてきました。弊社は伊藤忠の出資を受けており、大手企業との連携機会が多いです。大手企業の営業慣習を理解し、連携方法の発信を強化していきたいと考えています。
大手企業は、DXにおいて様々な課題を抱えています。カスタマーサクセスの観点からは、完全なフルスクラッチではなく柔軟性のあるシステムを提供し、業務モデルの作り方を支援する必要があります。
このため、従来のカスタマーサクセスという枠組みを超えて、「DXコンサルティング」としての取り組みが求められます。プロジェクトマネジメントの要素が強い高度な支援能力が必要となるでしょう。
まとめ
SaaS業界は不況の影響から発信が減り、目先ではカスタマーサクセスのテックタッチ化、NRR対応が求められるようになりました。
一方、大手企業は中長期のDX戦略からカスタマーサクセスに注目をし出しています。
この大手企業のDXトレンドを支援するという観点が2024年以降もキートレンドとなるでしょう。