2022年現在、SaaSはますます当たり前の存在になり、導入する企業やユーザーが増え続けています。そんな中、カスタマーサクセスは多くのユーザーに対応するために支援をスケールすることを考えなければいけません。
そして、その答えになるのが、人の力にデジタルを加える「デジタルカスタマーサクセス」です。国内では情報が少ないものの、アメリカでは一般的な考え方です。
この記事では、デジタルカスタマーサクセスについて、SaaSにおけるカスタマーサクセスのデジタル化を支援してきたopenpageが、ノウハウをもとにその内容から進め方までくわしく解説します。
デジタルカスタマーサクセスって何?
まずは、デジタルカスタマーサクセスがどんなものなのかを理解しましょう。
デジタルカスタマーサクセスとは
デジタルカスタマーサクセスとは、人の手にデジタルツールの力を加えてカスタマーサクセス支援に活かすこと。ごく単純に言えばデジタル化です。
これだけだと当たり前に感じるかもしれませんが、重要なのは意味のあるデジタル化が必要だということ。
単にツールを導入するだけでなく、それによって「顧客体験を損わないこと」、そのうえで「スケーラビリティ」や「効率化」、「より良い顧客体験」といった+αを実現するのが目標だということを押さえておきましょう。
デジタルカスタマーサクセスの例
デジタルカスタマーサクセスにはさまざまなやり方や事例がありますが、なかでも一般的で効果のあるものをいくつか見てみましょう。
学習サイト/トレーニングサイト
Web上にユーザーが製品について学ぶコンテンツを集めたサイトを作ります。
個別の質問やレクチャーの省略、進捗度のチェックや利用ログによるユーザー状況の見える化を実現し、オンボーディングの質を高める効果が期待できます。
オンラインコミュニティ
ユーザー同士が情報交換できるコミュニティをオンラインで構築します。
製品を提供する側と顧客という関係ではなくユーザー同士が互いに教え合うため、「自ら学ぶ」環境が構築でき、支援の効率化やロイヤルティ向上が期待できます。
ウェビナー、メール配信、アンケートなど
簡単なもので言えば、ウェビナー、メール配信、アンケートなどもデジタルカスタマーサクセスのひとつです。
すでに行っているかもしれませんが、使い方やタイミング次第ではさらに効率をアップしたり+αの効果も期待できます。
デジタルカスタマーサクセスを始める3つのメリット
次に、カスタマーサクセスをデジタル化することのメリットを知りましょう。
メリット①:カスタマーサクセスのスケールにつながる
もっとも大きなメリットは、カスタマーサクセスのスケール(規模拡大)につながるということです。
ウェビナー、メール配信などのツールを用いることで、顧客への1:nでの対応が可能になり、限られたリソースでも多くの顧客への支援が可能になります。
また、トレーニングサイトやコミュニティなどを整えれば、さらに顧客が自分自身で学習する環境づくりにもつながります。
メリット②:バラつきのない支援が可能に
バラつきのない安定した支援が可能になるのもデジタルカスタマーサクセスのメリットです。
FAQやトレーニングサイト、ナレッジベースなどを整備すれば、担当者に関わらずどの顧客にも同じレベルのインプットができるようになります。
特に、CS支援のなかでも重要度の高いオンボーディングの質が高まることで大きな効果が期待できます。
メリット③:効果を測定しやすい
デジタルツールを使うことは、支援の効果を分析しやすくするという意味でも効果的。
専用のCSツールであれば、トレーニングコンテンツの進捗状況や利用率といった行動データの取得、理解度のチェックなどが可能です。
支援がうまくいっているか、顧客が製品をどれくらい使っているかが見える化できると、施策の評価や改善にも役立ちます。
デジタルカスタマーサクセスに関するよくある誤解
デジタル化と聞くと、どうしても不安やデメリットが浮かんでくる人も多いはず。よくある疑問をここで解消しておきましょう。
顧客体験を損なう?
デジタルツールを使うと、人の手で支援するよりも質が下がるのでは?というのは誰もが思うことです。
確かに、人の手でおこなうべき部分に安易にツールを導入してしまうと質が下がる場合もあります。それを避けるために、どこを人が行い、どこをツールに任せるかの設計が重要です。
例えば、活用設計やオンボーディングの初期段階、解約リスクのある顧客への対応などは担当者が行い、機能面の疑問の解消、トレーニング、アンケートなどはツールに任せるといった切り分けが考えられます。
ハイタッチには使えない?
ハイタッチ支援が中心だからツールを導入するメリットがない、と考える人もいるでしょう。
ハイタッチ支援の場合には、効率化というよりは、通常の支援に加えてデジタルツールで+αを作るというイメージで進めると効果的です。
例えば、オンボーディングの一部をトレーニングサイトに移行することで自発的な学習につなげたり分析をしやすくする、コミュニティを活用してロイヤルティを高めるといったやり方が挙げられます。
導入が大変?
ツール導入というと、やはり金銭/人的コストも気になるところ。
確かに、あれもこれもと考えて必要以上に機能が豊富なツールを選ぶと、効果よりもコスト面でのデメリットが上回ることもあります。
いきなり多くの支援をデジタル化するのではなく、導入による効果が大きい領域を見極めて、シンプルなツールで始めれば負担は最小限で済みます。
デジタルカスタマーサクセスの進め方【4ステップ】
実際にデジタルカスタマーサクセスをはじめたいと思ったら、どのように進めていけば良いのでしょうか。
ステップ①:まずは顧客体験を整理しよう
デジタルツールを導入する前に、まずは顧客体験や支援の全体像を整理しましょう。
顧客にとってのゴールは何か、どのタイミングでどのような施策が必要か、どんな資料/コンテンツが必要かを明らかにします。この際、カスタマージャーニーの整理が役立ちます。
そのうえで、改善や効率化の余地があるプロセスがないかを探りましょう。
ステップ②:ツールでも問題ないか?どのツールを使うか?を見極める
改善の余地がありそうなプロセスがわかったら、より具体的にツール導入のイメージを膨らませていきます。
まずはその支援を「ツールに任せても問題ないか?」を考えましょう。対面での説明や感情を伝えることが必要なシーンであれば、ツール導入が逆効果になることもあります。
顧客体験を損なわないイメージができたら、さらにどのツール(チャネル)で代替すると効果が大きいか、効率化につながりそうかも見極めましょう。
ステップ③:小さくはじめよう
具体的に導入のイメージができたら、実際にツールを使っていきましょう。
まずは無料や安価なツールを使って小さくはじめるのが鉄則です。運用に慣れて実際に効果が出てきたら、より高機能なツールを導入したり、ほかにもツールに任せる部分を少しずつ増やしていきます。
ステップ④:効果測定も忘れずに
導入しっぱなしにならないよう、効果測定についてきちんと設計することも重要です。
導入するプロセス、ツールにもよりますが、活用度ならオンボーディング完了率やコンテンツ閲覧数、NPSの数値、効率についてはサポートへの質問数や担当者の投下時間などをウォッチします。
定期的に評価を行なって、効果的なデジタル化を実現しましょう。
まとめ
現在ますますユーザーが増えているSaaS。そのカスタマーサクセスが多くの顧客を支援するためには、上手にデジタルツールの力を借りることが重要です。
人がやるべき支援、ツールに任せた方が良い支援を見極めてうまく活用すれば、カスタマーサクセスをスケールするだけでなく、バラつきを抑えられる、分析がしやすくなる、顧客体験をさらに向上するなど、さまざまなメリットが得られます。
まずは今おこなっている支援や顧客体験を整理して、デジタル化の可能性を探ってみてはいかがでしょうか。