はじめに
営業DXが業界のトレンドになっています。多くの企業は営業生産性を上げるために、属人的な営業スタイルからの脱却を図っています。SFAを導入してはみたものの、社内への浸透が不十分で、メモの入力状況がまばらになってしまうケースも少なくありません。
一方、米国の最先端企業では複数のセールステックベンダーのツールを効果的に活用し、日本企業よりも明らかに高い生産性を実現しています。SFAの次なるステップとして、自社の生産性向上のための営業テクノロジーへの投資を各社が模索しています。
その中で注目されているのが、デジタルセールスルーム(DSR)です。SFAが社内向けの営業情報管理ツールであるのに対し、DSRは顧客向けの提案情報管理ツールです。営業用のサイトシステムであり、顧客に提案を見てもらうためのシステムと言えます。
営業は顧客への提案にできるだけ時間を使いたいものです。DSRは提案を直接デジタル上に載せることで、顧客との営業接点をデジタルに変革します。その意味では、本来の意味での営業DXと言えるでしょう。
営業DXとは何か
営業DXという言葉は、様々なベンダーが使用しているため、定義があいまいになっています。中にはSFAへの投資を営業DXだと主張するものもいます。
しかし、SFAは社内の営業データベースであり、顧客接点自体はデジタルになっていません。デジタル化はされているものの、トランスフォーメーション(変革)までは達成していないのです。顧客接点は、これまで通り対面やメール、電話、ZoomやTeamsのようなWeb会議システムで行われています。
営業DXが注目される背景には、顧客とのデジタル接点にトランスフォーメーション(変革)をもたらす点に利点があるからです。顧客接点がデジタルになれば、データを取得することができます。そのデータを活用して顧客体験を変えていくことにDXの価値があるのです。営業活動もデジタルを起点に行えば、営業の顧客体験を磨き込むことができるでしょう。
営業DXの業界トレンドとして、様々なセールステックの製品が登場しています。DSRを含め、顧客接点を直接担うツールも出てきました。人の代わりに顧客接点をデジタルが担うことで、人の工数を減らすことができます。労働人口の減少を背景に、営業担当の代わりに顧客に説明する営業DXが注目を集めているのです。
デジタルセールスルーム(DSR)が営業DXを加速する
DSRは、顧客向けの提案内容、商談の議事録、個別の資料、進め方のタスクなどがひとまとめになっているのが特徴です。顧客はデジタル上でこれらの情報を閲覧することができます。メールからDSRのリンクを開けば、デジタル上にすべての提案がまとまっているのです。顧客に直接配布できる点がDSRの大きな特徴と言えます。
営業DXの本質は、顧客とのデジタル接点を増やすことにあります。多くの営業情報をひとまとめにして顧客に見せられるツールは、DSRをおいて他にありません。DSRは数時間から数十時間にわたるデジタル接点を、営業活動の中で提供してくれるのです。これにより、営業生産性が飛躍的に向上します。
キヤノンマーケティングジャパン社とopenpageの資本業務提携
DSRの業界トレンドと市場予測について見ていきましょう。国内ではopenpageがいち早くDSRに投資し、キヤノンマーケティングジャパンとのアライアンスを組んでいます。SFAベンダーであるマツリカやジーニーなどのベンダーも参画しています。今後は新規参入も増え、外資系ベンダーの日本市場参入も考えられます。SFAとは性質の異なる、本来の意味での営業DXを進めるツールとして、DSR市場は一気に拡大することが予想されます。
営業DXにおけるDSR(デジタルセールスルーム)のメリット
DSRには、営業DXを進める上で多くのメリットがあります。
- 営業効率のDX化:
そもそも顧客接点が文字通りDX(デジタルトランスフォーメーション)します。営業が顧客に伝えたい情報、進めてほしいタスク、理解してほしいロジックがデジタル上で伝わるようになります。これにより営業効率が向上します。 - 顧客エンゲージメントのDX化:
DSRの情報は、社内向けの営業データベースに入れるというよりも、顧客に直接営業が渡す提案情報です。自分専用のページに提案がひとまとめになっている状態は、顧客にとって良い体験となります。高いレベルの情報提供がされていれば、顧客エンゲージメントが高まるでしょう。 - データ活用による営業戦略のDX化:
DSRの中には、これまでの営業提案情報が蓄積されていきます。顧客の反応も計測できるため、反応の良い提案を見返すこともできます。顧客のデジタル上の反応を見ながら提案を改善し、顧客体験のPDCAサイクルを回すことで、営業戦略がより洗練されていくのです。「このセグメントの顧客にはこういうストーリーがハマりやすい」といった定性的な商談シナリオが見えてくるでしょう。 - リモートワークへの対応とDX化:
DSRはリモートワークとの相性が良いと言えます。リモートワークでは対面で会わない分、自社の営業商談の状況が見えにくくなります。DSRを導入すれば、どのような提案をして、どう反応しているかがすべて文章化されます。リモートワークにおけるマネジメントの観点でも有効に機能するのです。
DSR(デジタルセールスルーム)導入で実現する営業DX
DSR導入で営業DXを実現するためには、以下のようなステップが必要です。
- 営業プロセスのDX化ステップ:
まずは営業プロセスのうち、商談前・商談中・商談後の各接点でどのようにDX化するかを考えます。DSRで商談前の準備をし、商談中には画面を直接見せながら、商談後でも配布されたページを見返せるようにします。このサイクルを回しながら、より充実したデジタル体験を営業で提供できるようにしていきます。 - DSRツール選定のポイント:
DSRは多くの営業担当者が使用するため、あまり複雑な機能が付いているものはおすすめできません。まずはシンプルに、DSR上に提案をまとめて配布するという点で優れたUXを持っているベンダーを選ぶのが良いでしょう。日本ではopenpageのDSRが最もおすすめです。 - 営業チームのDX化に向けた教育とトレーニング:
DSRで顧客にデジタルの提案を届けるという働き方は、慣れていないことがほとんどです。どのような提案をDSRに載せて、どう顧客に配布してデジタル接点を作るかをトレーニングする必要があります。 - 継続的な改善によるDXの深化:
DSR導入後は、実際に顧客に配布しながら、デジタル上でどのような反応をしているかを確認します。良い反応も悪い反応もあるでしょう。要因を考えながらDSR上の提案を磨き込んでいきます。
営業DXとDSR(デジタルセールスルーム)活用の成功事例
- キヤノンマーケティングジャパン社の営業DX事例:DSRによる効率改善
同社はopenpageに出資し、自社の商材の営業体験の中にopenpageのDSRを組み込みました。顧客に商談中〜商談後もDSR上の画面を見てもらうことで、顧客の納得を醸成しています。デジタルに提案をまとめて磨き込むことで、商談リードタイムの短縮や受注数の向上効果を実現しました。 - 内田洋行ITソリューションズ社の営業DX事例:リモート営業の成功
リモートワークにおける顧客への製品案内をopenpageのDSR上で実施しました。顧客の視聴状況を営業企画スタッフで分析し、デジタル上で見てもらうための営業情報を充実させました。その結果、リモートワーク化でも顧客エンゲージメントを高めることに成功したのです。
まとめ:営業DXの波に乗るために
営業DXは避けられない業界のトレンドとなっています。その中でもDSRが営業DXの鍵を握っていると言えるでしょう。競争力を維持するためにも、DSRの導入を検討すべき時期に来ています。
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