今回のテーマは、世界トップシェアのカスタマーサクセスプラットフォームを運営する「Gainsight(ゲインサイト)社」の日本市場進出についてです。
2022年5月に、Gainsight社が日本に進出するというニュースが発表されました。
どのような背景で進出したのか?進出にあたってどのような課題に直面するのか?
といったポイントについて解説します。
Gainsight社はどのような形で日本に進出してきたのか?
実はOpenpage代表・藤島はこのニュースが世に出る前から、
Gainsight代表のニック・メーターさんから直接お話を聞いていました。
ニック・メーターさんは以前より「日本市場は重要である」旨コメントを残していましたが、
今回のGainsightの日本市場進出については、
ジャパン・クラウド・コンピューティング株式会社(外資系のSaaSベンダーが日本市場に進出する際にサポートを行っている会社)とパートナーを組んでいます。
どのようなスキームになっているか、詳細は不明ですが、
Gainsight社がとジャパン・クラウド社の合弁会社のような形、あるいはジャパン・クラウド社が一部出資している形であると想定しています。
つまり、Gainsight社が「単独で」日本市場に進出しているわけではありません。
Gainsight社は、カスタマーサクセスの領域に関する哲学や思想的な要素が非常に強く、
今回は外部の会社(今回であればジャパン・クラウド社)と組んで、
Gainsight社が考える哲学や思想をどこまで日本のマーケットにも伝えられるのか、と言う点が課題になってくるでしょう。
Gainsightが日本で拡大していく上での課題とは?
日本で1社目にGainsight社のサービスを導入したのが、名刺管理や顧客管理SaaSを提供しているSansan社。
2社目が藤島の古巣のビズリーチ社、3社目がSPEEDAなどの経済情報分析ツールを提供しているユーザベース社と言われています。
その他、シスコシステムズやIBMなどの外資系IT企業ではグローバルでGainsight社と契約をしており、グローバル契約の中で日本支社でも利用する、といったケースもあるようです。
Gainsight社の日本における展開として、
Sansan社やユーザベース社など規模の大きい日系SaaSベンダーとの契約を拡大していく、
あるいは日本市場に進出しており、
ジャパン・クラウド社がサポートをしているbraze社やwalkme社等の外資系SaaSベンダーとの提携等により契約を拡大していく、といったストーリーが考えられます。
Gainsight社の日本進出における懸念点としては、
日本でIT業界で存在感の大きい「Sler(システムインテグレーター)」が、まだカスタマーサクセスに本格的に投資していないことです。
その意味では、日本のカスタマーサクセス市場は相対的に小さく、
Gainsight社が「日本に進出してみたけど、あまり広がらなかったから撤退しよう」という意思決定をする可能性もゼロとは言えないでしょう。
また、Gainsight社が提供しているツールとしては、
カスタマーサクセスのうち「ヘルススコア」などの領域になりますが、この領域では国内でも多数の競合サービスが出てきています。
代表的な企業としてはCommmune社が挙げられます。
Commmune社が提供している「SuccessHub」はカスタマーサクセス業界でも存在感を増してきており、営業・マーケティングに力を入れているようです。
Gainsight社が日本国内のSaaSベンダーに対する営業活動を行う上で、
こういった競合企業とコンペになることは当然起こり得る展開であり、
どのような戦略で営業・マーケティング活動を進めていくかは注目に値します。
Gainsightが発信する情報が日本のCS業界を盛り上げる!
競合企業と鎬を削る形になることは必至ですが、
そもそも「Gainsightが日本に進出したこと」自体が、日本のカスタマーサクセス業界として非常に歓迎すべきことでしょう。
Gainsight社は「Pulse」というカスタマーサクセスに関する大型イベントを行ったり、
カスタマーサクセスに関する「最先端」な情報発信を積極的に行っています。
Gainsight社が発信する情報が日本でもアプローチしやすくなることは、非常に良いことです。
例えば、LINEWORKSを運営するワークスモバイルジャパン株式会社の元CS責任者で、
現・Prodotto合同会社代表の萩原雅裕さんという方が、
Gainsight社のイベント「Pluse」に登壇された記事は非常に興味深いです。
また、Gainsight社の日本支社第1号社員は、
Adobeでカスタマーサクセス責任者をやられていた和久井かおりさんという方であり、
今後日本支社からのカスタマーサクセスに関する面白い発信も増えるのではないでしょうか。