世界的なゲーム機・ゲームソフトメーカーである任天堂。
任天堂の生み出したゲームや、マリオなどに代表されるキャラクターに愛着を持っている方も多いのではないでしょうか。
世界中の人々を惹きつける任天堂の戦略について、カスタマーサクセスの観点から解説します。
デジタル領域への投資が活発な任天堂
任天堂のIR等からわかる、企業戦略で重要なポイントとしては、
サブスクリプションとモバイル、IP(知的財産権)の展開先としての映画やテーマパークなどにあるのではないでしょうか。
そもそも任天堂は、各企業でも取り組みを進めているDX(デジタルトランスフォーメーション)やデジタル領域への投資を非常に強化している会社です。
任天堂のゲームソフトは、いまやパッケージ版以外にもオンラインで購入しインストールして遊ぶことができます。
サブスクリプションも強化しています。
例えばNINTENDO SWITCHでインターネット通信や対戦をするためには月額課金が必要ですが、
その代わりにスーパーファミコンやニンテンドー64等、過去のハードで販売されたソフトも遊べるようになっています。
任天堂のアセットを活用したIP展開にも積極的
任天堂としては、最近はスマートフォンゲームの開発にも取り組んでいることに加え、
マリオなどのキャラクターのIP展開をどのように拡大するか、に注力されている印象です。
IP展開の大きな取り組みとしては、「映画」です。
世界的な映画配給企業であるユニバーサル・ピクチャーズの子会社、イルミネーション社(Illumination Entertainment)は「ミニオンズ」などのアニメーション作品の制作で有名ですが、
現在任天堂のシンボルキャラクターとも言うべき「スーパーマリオ」の映画を作ろうとしているようです。
※2023年に「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」として公開予定:
https://www.businesswire.com/news/home/20221005005955/ja/
任天堂としては、自社のキャラクターが登場する映画を作って露出をさらに図り、
グッズ販売等の強化に繋げていく狙いがあると思われます。
大阪にあるユニバーサル・スタジオ・ジャパンでも、
2021年に「スーパー・ニンテンドー・ワールド」というマリオに特化したエリアが新設されたことは、皆さんの記憶に新しいのではないでしょうか。
このように、デジタルを起点に広くIP展開を進めていくことが任天堂の戦略の中心になっていると言えます。
任天堂の戦略をカスタマーサクセスに見ると・・・?
カスタマーサクセス的には、任天堂の戦略は「ダブルジョパティーの法則」に該当します。
リピート顧客やロイヤル顧客を作ることなどを考えたときに、
一般的には「お得意様に対して丁寧に対応する」等の施策を取ることが多いと思いますが、
この「ダブルジョパティーの法則」は特定の顧客にフォーカスを当てたものではなく、
「”市場の中でどれだけその製品やサービスが浸透しているか”こそがリピートの秘訣・源泉である」という法則です。
最近の任天堂の戦略は、チャネルや顧客接点をさまざまな場に広げようという方向性にあります。
昔は家電量販店などの小売店でゲームソフトを販売していましたが、
今やオンライン、サブスクリプション、スマートフォンや映画、遊園地(USJ)など、とにかくさまざまな接点(タッチポイント)を増やしています。
このように、顧客接点が増えれば増えるほど結果的に任天堂の製品をリピートしてもらえる、というのが「ダブルジョパティーの法則」です。
SaaSにも当てはまる「ダブルジョパティーの法則」
シェア拡大によってリピートが増えるという考え方は、SaaSにも繋がります。
建築業界向けのSaaSプロダクトを展開しているANDPAD社では、名古屋圏だけでみるとなんと「7割」のシェアを占めているそうです。
同じ地域の方々がこれだけANDPADの製品を使っていると、「じゃあ、うちも使おうか」という文化形成や、土地柄の形成ができます。
「みんなが使ってるからうちも使おう、リピートしよう」という状態を作れていることは、まさに「ダブルジョパティーの法則」を体現できている状態です。
カスタマーサクセスの文脈ではよく「お客様を育てましょう」といった言説も多いですが、「シェアを高めることで結果的にリピートする」という考え方が、
任天堂の事例から学べるカスタマーサクセスの戦略の1つだと言えます。