これからカスタマーサクセスを立ち上げる、あるいはすでに取り組んでいて、今後さらに規模を拡大していきたい企業は、組織作りについて考える必要があります。
カスタマーサクセスに必要な業務や役割を整理したうえで、それぞれを専任チームのスペシャリストが担当する体制ができれば、顧客支援の質や効率がアップし、より多くの顧客の成功に伴走できるようになります。
この記事では、カスタマーサクセスの組織のつくり方について、モデルとなる組織図の例を紹介し、さらにそれをもとに独自の組織を作るための設計方法も解説します。
カスタマーサクセスの組織図モデル
まずは、カスタマーサクセスの組織作りで参考になるモデルをいくつか見てみましょう。
①:機能ごとにチーム分け
機能ごとにチームを切り分けるベーシックな組織図の例です。
顧客体験に沿って、アカウント全体を管理するCSM、オンボーディングやアダプションを担当するチーム、さらなる活用を推進するチームに分かれて支援を行います。
さらに別軸で、近年重要度の高まっているコンテンツ配信を中心としたテックタッチを行うチームや、Ops/イネーブルメントなど、部署全体の効果を最大化するために業務フローの設計・改善やツール導入を行うチームも加わります。
カスタマーサクセス立ち上げからある程度規模が大きくなってきた企業が組織作りをおこなう場合に参考にしやすい一般的な例です。
②:顧客の規模/地域ごとにチーム分け
顧客の規模や地域に合わせて支援チームを組織していくパターン。この例では、大企業への支援でチームをひとつつくり、中小企業支援はさらに地域別にチームをつくっています。
①の例とは異なり、各チーム内でCSM、オンボーディング、アダプションなどの担当者をおくことになります。
顧客の属性に合わせた的確な支援ができるため、顧客の幅が広がってきたり、全国に散らばるくらい規模が拡大した企業にマッチしています。
また、顧客属性に関わらず共通の業務をおこなうテックタッチやOpsなどは独立して切り出すのが一般的です。
理想的なカスタマーサクセス組織のつくり方
続いて、モデルを参考にしながら、実際にカスタマーサクセス組織を設計し作り上げていくにはどうすれば良いかを考えていきましょう。
カスタマーサクセス組織に必要な機能とは
これからカスタマーサクセスの組織作りを進める場合、まずは必要な機能(役割)を知っておかなければいけません。最終的に以下のような内容をカバーする組織を作り上げる必要があります。
- リーダー(責任者)
→カスタマーサクセス組織全体のマネジメント、経営レベルでの判断を行う
- CSM
→顧客アカウントごとのマネジメントを行う
- オンボーディング
→新規顧客に対してトレーニング、教育を行う
- 運用/コンサルティング
→積極的な提案でさらなる活用をうながす
- テックタッチ、コンテンツ配信
→デジタルツールやサイト、動画を利用して1:nでの支援を行う
- 契約更新/拡大
→顧客の契約更新やアップセル・クロスセルを目指して提案や交渉を行う
- ops/イネーブルメント
→部署のパフォーマンス・効率向上のために設計やツール導入などを行う
そのほか、顧客同士のつながりを支援に活かすのであればコミュニティの管理や運営といった役割が必要になることもあります。
組織化のステップ
立ち上げ直後のカスタマーサクセス チームが必要な機能を漏れなくカバーできる組織を作りあげていくためには、ステップを踏んで組織作りを進めていく必要があります。
1.まずは単一チームで支援を徹底
カスタマーサクセス立ち上げ直後はメンバーが1人〜数人と少なく、チームを分けて活動するのは現実的ではありません。
よって、CSM、オンボーディング、コンサルティングなど一連の機能をすべてカバーして活動するのが一般的です。
この段階では、効率やパフォーマンスの最適化を考えるというよりは、ハイタッチを中心に泥臭く個々の顧客に対応して支援の基盤を作っていきます。
2.支援の型化、テックタッチ導入、ツール導入での効率化などを進める
5人、10人とチームメンバーが増えてきたら、これまで個別に行っていた支援を少しずつパターン化したり、テックタッチやOpsに取り組むフェーズに入ります。
カスタマージャーニーの整理や支援ノウハウの横展開、サイトでのコンテンツ配信、業務のモニタリングなどを行います。
また、チーム内でオンボーディング担当、テックタッチ担当などある程度の役割分担も進めていきましょう。
3.それぞれの機能をチームとして切り出し専門化する
支援の型やテックタッチ、Opsの業務が固まり、全体のメンバーが20人〜30人ほどになったら、それぞれの機能をチームとして切り出して専門化していきます。
まずは支援に関わるオンボーディングや運用/コンサルティング、次にテックタッチと顧客体験を基準に優先順位をつけて進めていくと良いでしょう。
この段階で、はじめに紹介した①のモデルに近い組織図が描けるようになります。
4.組織構造を最適化していく
さらに規模が拡大し、顧客の属性や地域などが多様化してきたら、チームの構造をそれに合わせて最適化していくのも有効です。
冒頭の②のモデルのように、地域別にチームを分けたり大企業への支援チームを組織するのは良い例です。
ほかにも、ハイタッチ/ロータッチ/テックタッチのタッチモデルで分ける、顧客の業種ごとに分けるといったやり方も考えられます。製品や組織の特徴に合わせて最適な構造を作っていきましょう。
組織化を進めるうえで注意すべきこと
カスタマーサクセスを組織化するにあたって注意したいポイントもいくつかあります。押さえておきましょう。
まず、社内での部署自体の位置付けです。顧客体験に責任を負うCCO(顧客責任者)を設置するか、CEO/COOの下にカスタマーサクセスが位置するのが理想的です。
逆にセールスの下に従属してしまうのはあまり望ましくありません。営業部門は新規顧客の獲得が目的であり、解約の防止やLTVの最大化、ひいては顧客の成功を最優先に活動するわけではないため、目線が一致しないリスクがあるからです。
また、顧客体験を第一に考えることも重要です。組織としての役割分担は必要ですが、それによって担当者間の受け渡しやエスカレーションで余計なコミュニケーションが発生したり、顧客にストレスをかけるのはNG。
チーム間での意思疎通や連携がスムーズにできるよう、カスタマージャーニーやSFAの情報、活用データなどを全チームが共有して目線を揃えておくことで対応しましょう。
まとめ
カスタマーサクセスに取り組む企業は、規模拡大や顧客数の増加に合わせて、部署の組織作りを進めていく必要があります。
具体的な進め方としては、自社のカスタマーサクセスに必要な役割を理解したうえで、まずは少人数で足元の支援を進め、少しずつ型作りや効率化に取り組んでいき、最終的にチームとしての切り出しを行いましょう。また、その際にモデルとなる組織図を参考にすると整理が楽になります。
まずは自チームの構造や役割分担を改めて整理して、より良い組織作りの余地がないか探ってみましょう。