インサイドセールスで、ただの「テレアポ」をしてませんか?
今回も、株式会社セールスのタクミ 佐藤匠さんをゲストにお招きし、
openpage代表・藤島との対談形式でお届けします。
「本物のインサイドセールス」についてお話をします。(以下、敬称略)
価値の高い「ハウスリスト」をとことん掘り起こそう
藤島:
(佐藤)匠さんが考えるインサイドセールスの定義とはどのようなものでしょうか。
佐藤:
大きくはインバウンドとアウトバウンドに分かれる、と思っています。
インバウンドは、「接点があるお客様に対しての情報提供」をすることで、アウトバウンドは、「過去に接点がないお客様に対しての情報提供」になります。
藤島:
テレアポとインサイドセールスをごちゃごちゃにしている営業組織が多いのかなと思っています。
基本は、「何かしらのコンバージョンをした状態」が前提ですよね。
例えば、ホワイトペーパーの閲覧やセミナー参加をいただいた顧客の情報を状態で顧客の情報を加味しながら架電する、というのが私の考えるインサイドセールスのイメージです。
ただ、実態は「テレアポ組織」になってしまうことも多いのでしょうか。
佐藤:
そうですね。
ハウスリストがあるにもかかわらず、「とりあえずテレアポをしろ」「アウトバウンドしていないからする」というケースはよくあります。
理想的には、全てのリードソースやリード状況を見た上で、
ハウスリストを掘り起こすのが良いのか、全く別のアウトバウンドをした方がいいのか、
といった組織状況からまずは選んでいただく必要があるかなとは思います。
藤島:
ただ、「実はハウスリストが思ったより価値のあるものだった」というケースもありますよね。
佐藤:
私もたくさんの会社のご支援をする中で、アウトバウンドのご支援もありますし、ハウスリストの掘り起こしのご支援もしています。
ただ、数字から申し上げますとアポ率はやはり、ハウスリストの方が圧倒的に高いのです。
大体、ハウスリストの掘り起こしは15〜20%ぐらいアポイントに繋げることができますが、
アウトバウンドの場合はすごく良くても3〜5%程度です。
こう見るとざっと3〜5倍ぐらいの差がでていますので、
「少ない営業組織の中でどこにセールスを振り分けるか」で考えると、
ハウスリストがあるのであれば、とことんハウスリストを掘り起こし・すり潰す、
ぐらいの意識でいた方が、効率よく売上に繋げられると思います。
藤島:
とことんハウスリストをすり潰す、というのはキーワードだと思いました。
ハウスリストへのインサイドセールスとして、すり潰す、というのは具体的にはどんなことをやっていくのでしょうか。
佐藤:
基本的にハウスリストの場合、何かしらお客様との接点があったケースがほとんどです。
私の場合は、最後にお客様と連絡した際に、
「次にいつアプローチするか」「何をアプローチするか」をセットでハウスリストに残しています。
そうすると、「次に・何を・いつ・接点を持てばいいか」がわかるので、これに沿って基本的にはすり潰していくのですが、
大体平均的に2ヶ月に1回は営業マンがハウスリストのお客様に連絡をして接触を持つ、という必要があるかなと思います。
藤島:
「ハウスリストをすり潰す」と言っても、毎日お客様に電話をかけても意味がないので、
商談に繋がらなかったとしても、ちゃんと定期的に接触して、コミュニケーションをして、
また接触をしていく上では、「次にどんなコミュニケーションを取るべきか」をSFAに残していくことが重要なのですね。
インサイドセールスの「成功」と「失敗」とは?
藤島:
インサイドセールスには失敗例もあると思うのですが、
匠さんが考える、「インサイドセールスの成功と失敗」はどのようなものでしょうか。
佐藤:
成功は、「自分たちでPDCAを回せているかどうか」で決まると思っています。
例えば短期的に外注をして成功しても、「なぜ成功したのかがわからない」というケースが非常に多いです。
同様に「外注したがうまくいかなかった、だからPDCAを回せない」というケースも多いです。
こういった状況は、いずれにしても再現性がないため、成功には繋がりません。
その意味では、「自分でしっかりPDCAを回せる観点で、再現性を持ったノウハウと、
PDCAを回せるスキームがあるかどうか」はポイントと言えるのではないでしょうか。
藤島:
インサイドセールスのPDCAは、具体的に何を回すのでしょうか。
佐藤:
例えばメールであれば配信する内容やコンテンツを変えてみる、ということもできますし、
電話であれば頻度や訴求する内容、タイミングを変えてみる。
またCRMへの入力方法や、「次にいつ当たるのか」までサイクルを回すためのフローを変える、ということもPDCAを回すことになります。
単にそのアウトプットの電話とか、文面だけ変えるのではなく、
お客様の情報をしっかりと持っておく、というところからPDCAサイクルを回す必要があると思いますね。
藤島:
インサイドセールスだと「ウェビナー受講をしたお客様にどうアポを取るか」など、方法論を教えるパターンもあると思うのですが、
そもそもPDCAをちゃんと回していくための会議体だとか、振り返りの体制構築といったところに実は成功の秘訣が埋まっている、といった感じなんですね。
佐藤:
そうですね。
いわゆるテクニック論では「こういうふうに話したら、アポイントが取れます」というものが多いと思いますが、
それを1対1で話し合ってもう少しマクロの観点で捉えた方が良いでしょう。
例えば、ハウスリストに対してメルマガを送付する時に、
「開封率が何%ぐらいあって、配信停止が何%ぐらいあるのか」というのは全体の数字を見ていかないといけません。
1件1件アポは順調に取れているように見えても、全体のハウスリストをすり減らしてしまっているので、
長期的に見るとハウスリストがなくなっていってしまう、という状況も考えられます。
その意味では、マスの転換率や開封率を見ながら、
テクニック論で1件1件のアポイントを取る、といった形のフォローが必要かなと思っています。
インサイドセールスのPDCAサイクルでは、「マクロ」と「ミクロ」の往復が重要
藤島:
PDCAを回していく上で、見ていくべき指標、あるいはすべき目標設定はどのようなものがありますか。
佐藤:
基本的に、通電率やアポイント率は平均を取っても大きく変わらないと思っています。
ハウスリストであれば20%ぐらいに通電し、そこから10〜15%がアポイントに繋がることが多いです。
これを大きく変えていくとすると、
例えば「電話という手段はよくないよね」とか、逆に「通電率は上がっていてもアポイント率が上がっていないのであれば、訴求の仕方が悪いよね」といったケースが考えられます。
「転換率の平均」が一般的な数値としてありますので、電話にしてもメールにしても、
その平均値を見た上で大きく乖離がないか、という点を指標として持っておくと、
「マクロの観点」でのアプローチは失敗しないかなと思います。
藤島:
リードも日に日に変わっていくと思いますし、インサイドセールスも退職したり、新人が入ったりすると思うので、また変化がある中で、
一定のその「インサイドセールスの基準値」みたいなところに大きく乖離が出てないかどうか、見ながら改善していくっていう感じですかね。
佐藤:
そうですね。
何かしら異常がある場合、例えば「通電率はいいんだけれども、アポイント率が悪い」といった場合には、やっぱり現場の何かしらのフローに問題がある可能性もあります。
インサイドセールスの会話を録音してもらってマネージャーが聞いてみる、といった、
ミクロの観点で見て、話し方をフィードバックする、ということも有効です。
このように「マクロとミクロの往復」をすることが重要かなと思います。
藤島:
インサイドセールスの振り返りとかフィードバックをする頻度はどうお考えですか。
佐藤:
一定のスキルが得られれば自分達でPDCAのサイクルを回せるようになります。
立ち上げ時期の3ヶ月はガッツリ並走することが重要です。
例えばみんなでお互いの架電内容を聞き合う、というフィードバック方法を採用している企業もいらっしゃいます。
その後は週1や月1でもいいと思います。
上長の方が基本的に転換率を見ていらっしゃると思うので、問題が発生した場合だけちょっと原因分析をして必要なフィードバックをする。
こういったイメージでしょうか。
藤島:
インサイドセールスの部門長とかマネージャーやってる方は、常に細かくレポートを見て数字を把握しておくべきだと思いますし、
チームとしては毎週あるいは月2とかでも良いので、数字が悪くなっていないか、
もっと良い訴求方法はないか等、通電率を上げるための電話の頻度や訴求内容を考え続ける、というイメージですね。
インサイドセールスで最も重要なことは「再現性」
藤島:
インサイドセールスでズバリ「一番大事なこと」は何だと思いますか。
佐藤:
やはり「再現性」に尽きるかなと思っております。
「1人、すごいアポイントが取れる方」がいても、「他の方がアポイントを取れない、苦手だ」といったケースはよくあります。
そうなると全体の転換率が平均化していかないので、1人1人がどれだけ再現性を持った形でトークに落とし込むかだったり、
トークが難しければメールに落とし込むようにする、といった形で、
同じような結果が出る体制を作るのが一番重要かなと思っています。
藤島:
インサイドセールスはある一定の人数のチームでやらないといけない。
「1人ですごいプレーヤーがいる」というよりは、全てのチームでまんべんなく、良い結果が出るような体制構築が必要ということですね。
佐藤:
そうですね。
外注さんにお願いするケースもあります。
ただ、外注さんがいなくなった時や内製化して規模を大きくしようとした時に、ノウハウがなく、再現性持って回せなくて失敗してしまったケースもよくあります。
その意味でも、「自社でもどれだけ再現性を持って回せるか」は非常に重要だと思います。
藤島:
もう1つ、「インサイドセールスのメンタル問題」もあると思っています。
ずっと架電をし続けるのはつらいし、嫌になってくることもあると思います。
インサイドセールスは、このメンタル問題にどう向き合うべきでしょうか。
佐藤:
どんな理由をつけようと、やはり大変なものは大変です。
そのため、「チームで楽しくする」ということが一番わかりやすいかなと思っています。
例えば架電チームを作って競争するような形で、毎週転換率を競ってもらう。
優勝チームに対してインセンティブをつける等、ゲーム要素を入れるっていうところしか、なかなか難しいのかなと思っています。
私のお客様もスタートアップが多いのですが、
インサイドセールスだけ担当になると、ノウハウもサイロ化してしまうので、
「インサイドセールスとフィールドセールスを一緒にやっていく」という対策もよく取ります。
インサイドセールスとフィールドセールスを一緒にやることで、インサイドセールスだけで終わらないでノウハウも共有されますし、ストレスも溜まりづらくなります。
本当に大きい企業さんでなければ、インサイドセールスとフィールドセールスを兼任される、とうのも1つの選択肢でしょう。
藤島:
インサイドセールスのモチベーションを上げるために、楽しい雰囲気作りっていうのは私もすごく大事だなっていう感じています。
salesforceでも、セールスの組織はなるべく若い方で固めて、アロハシャツ着て、みたいな。
そういった文化も大事ですよね。
佐藤:
そうですね。
楽しさかつ、自分達のブランディングとして提案部隊みたいな形で突き抜けると、メンバーもそれに応じて楽しく自主的にやってくれるケースは多いと思います。
藤島:
私は前職でビズリーチにいましたが、
インサイドセールスの重野さんという方がいらっしゃり、彼がインサイドセールスで一番最初にやったことは、
部門のビジョンや「そもそもこの組織はどういう組織なのか」の定義づけをされていたのが印象です。
いきなり目標を設計して「お前はこういうふうに架電しろ」みたいな話ではなくて、
チームメンバーに業務をやってもらう上でのモチベート、
あるいは自尊心を高めていくような働きかけが大事だったんだなと感じます。
佐藤:
やっぱりどこまでいってもインサイドセールスは負荷がかかる所ではあるので、
外注であったりとか、外部に委託するという検討されるのも、
社内の人材を長く使っていくという観点では、うまい方法かなと思います。