SaaS企業を中心にますます重要な役割になりつつあるカスタマーサクセス。多くの企業がチームを組織し、採用も盛んに行われています。一方で、歴史が浅いこともあり、プロフェッショナル人材が少なく、未経験者も多いのが実情です。
では、そうしたカスタマーサクセス担当者がまず身につけておくべき基本的なスキルとは一体どのようなものなのでしょうか。
基本となる考え方と、代表的なものを7つ解説します。
カスタマーサクセスのスキル 基本となる考え方
カスタマーサクセスが身につけるべきスキルを具体的に見るまえに、まずは基本となる考え方を理解しておきましょう。
カスタマーサクセスの役割から逆算する
カスタマーサクセスの目的は、顧客にサービスを通じて目的を達成してもらうこと。そのために、顧客を見守り、必要に応じて手助けするのが役割です。必要になるスキルもその役割から逆算します。
顧客に目的を達成してもらうためには、サービス利用開始(オンボーディング)、運用(アダプション)、継続(エクスパンション)という一連のプロセスが存在し、それぞれ異なった支援が必要になります。
各プロセスでの支援の内容をブレークダウンしていくと、操作説明、サポートコンテンツ作成、活用支援、データ分析、更新提案……といった具体的なアクションが洗い出され、それを実行するためのスキルが特定できます。
支援の特徴によって重要なスキルは異なる
全体像は上の通りですが、サービスや組織によって支援に特徴があり、それに合わせて必要なスキルも異なります。
例えば、ハイタッチ支援のチームであれば、顧客との直接的なコミュニケーションやプレゼン能力などが重要になるのに対して、ロータッチやテックタッチ支援であれば、複数顧客の管理スキル、データ分析やツールへのリテラシー、プロダクト理解などがより重視されるでしょう。
その他、オンボーディング、アダプション、エクスパンションとプロセスごとにチームが異なる場合もあります。配属される組織やチームにとって重要なスキルをまずは身につけましょう。
カスタマーサクセスが身につけておくべき7つのスキル
ここからは、実際にカスタマーサクセスが身につけておくべき一般的なスキルを7つ解説します。
コミュニケーション・顧客との関係構築
カスタマーサクセスの基本は、顧客とのコミュニケーションにあります。
まず対面や電話、メールといったやりとりにおけるビジネスマナー、ソーシャルスキルは最低限押さえておかなければなりません。
加えて、コミュニケーションの中で相手の感情やニーズを捉えて、それに対して適切な返答や情報の伝達ができるようになることが必要です。
このようなコミュニケーションを積み重ねて信頼関係を築くことで、サービスやブランド全体へのロイヤルティを高められます。
問題解決
顧客とのコミュニケーションで見えた課題や不満をすばやく解決することもカスタマーサクセスの役割です。
問題定義:顧客が抱えている問題は何か、どのような状態になれば解決されるのか
原因特定:問題を引き起こしているのが何か(機能/操作方法/活用方法/コミュニケーション……)を明確にする
対応方法:解決のためには何が必要か(資料・情報のインプット/活用方法の見直し/他機能の利用/プロダクト改修……)
こうした内容を設計して顧客にロジカルに説明する能力が必要です。
なお、問題を抱えたまま利用することは顧客にとって大きなストレスになり、サービスへの不信感、解約リスクへとつながってしまうため、その場ですばやく解決する瞬発力も求められます。
計画性・時間/リソースの管理
瞬発的な対応とは異なる、中長期的な支援を遂行する能力も必要です。CSMが設計したカスタマージャーニーに沿って、担当者はその各ポイントでの施策やアクションをスケジューリングしながら計画的にこなしていきます。
複数顧客に支援を行う場合には、それぞれに投下するリソースや時間に関するセルフマネジメントも不可欠です。感覚的にこなすと気づかないうちに支援が手薄になってしまうため、ツールを用いて可視化するといった工夫も有効です。
マーケティングスキル
リテンションをはじめ、マーケティングのスキルはカスタマーサクセスにとっても有用なものが多いため、身につけておいて損はありません。
特に、全ての顧客の情報を蓄積・管理・分析して、それぞれの状態に応じたアプローチをとるCRMの考え方は、カスタマーサクセスにとっても不可欠な内容です。
また、顧客の活用へのモチベーションを高めるような質の高いWebコンテンツや動画コンテンツの制作スキルも身につけておきたいところです。
データ分析
効果的な支援を行うためには、顧客の状態を可視化して正確に把握する必要があり、そのためにはデータでの分析が欠かせません。
表計算ソフトを利用した一般的なデータ処理はもちろん、分析ツールの操作にも習熟しておきたいところです。また、データベースの構造やSQLをはじめとした言語なども理解しておくことができれば、詳細な分析やヘルススコアの運用に役立つでしょう。
プロダクトへの理解
顧客にサービスを利用して成功してもらうためには、支援する側もそれについて深く理解する必要があります。
サービスの価値、実現できること、各種機能や操作といった内容は、覚えているだけでなく説明して理解してもらえるレベルが最低限と言えます。
また、カスタマーサクセスは顧客のサービスに対する声をもっとも近くで受け取れる役割でもあります。
コミュニケーションで吸い上げた内容を開発に共有しサービスに反映していくことで、価値のあるサービスへと変化させていきますが、プロダクトの技術面への理解がなければ、開発と上手くコミュニケーションを取ることが難しくなります。
ツールへのリテラシー
ロータッチやテックタッチでの支援をはじめ、カスタマーサクセスの業務では多くのツールを扱うことになります。一般的なものだけでも、
- コミュニケーションツール
- 顧客管理ツール
- CMS(コンテンツ管理システム)
- 分析ツール
- カスタマーサクセスツール
などが挙げられます。こうした各種ツールを使いこなすリテラシーは最低限なければ務まらないでしょう。
まとめ
SaaSやサブスクリプションの拡大によって、カスタマーサクセスという職種はますます一般的になり、多くの企業で求められる役割になっています。一方で、業界の歴史が浅いため、プロフェッショナルが少なく、未経験者も多いのが実情。
そうした経験の浅いカスタマーサクセス担当者にとっては、まずは最低限必要とされるスキルを身につけ、実務経験を積んでいくことが重要です。
具体的には、コミュニケーションを軸として、問題解決、顧客管理、データ分析、プロダクトへの理解といったスキルが求められます。