最近、テックタッチという言葉が注目を集めています。聞きなれないかもしれませんが、特にSaaSビジネスを展開する企業でよく利用されている言葉です。
そこで今回は、テックタッチの概要や導入しないと困る理由などについて解説します。この機会にテックタッチがどのようなものなのか理解しておきましょう。
カスタマーサクセスはなぜテックタッチを導入した方が良いのか
テックタッチを導入しない場合、どのようなことが起こるのでしょうか。導入しないことによる顧客との関係や影響について解説していきます。
顧客とCSMの時間をより有効に活用できない
テックタッチを導入しない企業は、ハイタッチのカスタマーサクセス施策により、多くのリソースを割く必要があります。そのため、CSM(カスタマーサクセスマネージャー:カスタマーサクセス施策を実施する責任者)の工数が肥大化するだけでなく、リソース不足により顧客に十分なサポートを実施することが困難になるでしょう。
日本ではまだカスタマーサクセス歴が長いプロフェッショナルは少なく、優秀な人材の確保が難しい状況です。そのため、社内のCSMを担当する人材を有効活用することが求められます。テックタッチを導入して、CSMの負担を下げ、時間をより有効活用できるようにすることが大切です。
企業の拡張が難しくなる
テックタッチを導入しない企業は、限られたリソースで効果的にカスタマーサクセス施策を実施できなくなるでしょう。テックタッチをすれば得られる顧客情報が得られなくなる点も気づきにくいデメリットです。顧客情報をデータで蓄積することで、CSMは顧客ごとに最適なサポートが行えるようになることを見逃してはいけません。
例えば、テックタッチにより得られた顧客の属性や課題、サービスの利用状況などに応じてセグメント分けを実施し、それぞれに適したカスタマーサクセスチームをアサインすることで、顧客満足度の向上につなげられます。デジタルカスタマーサクセスによって貯めた自社の顧客情報を適宜分析し、最適なカスタマーサクセス体制に調整できる仕組みを構築することで、少ないリソースで多くのサポートが実施できるようになるでしょう。
コミュニケーションの質が低くなる
テックタッチを導入しない企業は、顧客と質の高いコミュニケーションがとりづらくなるでしょう。説明をすべてハイタッチに頼るということは、機能説明やトラブルシューティングなど簡単な内容もすべて口頭でしなければならないということです。しかし、テックタッチで基本的な案内を行い、ハイタッチでより踏み込んだ案内を行うことで、より質の高いコミュニケーションが可能になります。
ハイタッチのCSMが顧客の課題を理解していることが伝われば、サービスやキャンペーンの提案などを実施した際に、顧客に受け入れてもらえる可能性が高いでしょう。一方で、テックタッチを導入していない企業は基本的な製品案内に説明工数を取られてしまい、顧客の課題解決のための深いコミュニケーションをとることは困難になります。
顧客が自己解決できるソリューションを提供できない
テックタッチを導入しない企業は、顧客が自社のサービスを自力で有効活用できなくなり、引き続きハイタッチのカスタマーサクセスに依存する必要があります。一方で、テクノロジーを活用したカスタマーサクセス施策を提供することにより、顧客が自らサービスの有効活用や課題解決を行えるようになるでしょう。
例えば、動画による教育コンテンツやWebサイトのQA、チャットボットによるサポートなどを準備することで、CSMの人のリソースを使うことなく、顧客自身でサービスを有効活用し、課題解決につなげられるように成長させることが理想です。もちろん、すべてをテックタッチで完結させるのではなく、顧客が困ったときにサポートできるCSMによる窓口の準備も忘れてはいけません。
企業と顧客が真剣に製品活用に取り組めない
テックタッチを導入しなければ、今後企業が顧客のエンゲージメントを強化することが難しくなるでしょう。顧客の自己解決力を高め、顧客自身が製品活用に真剣に向き合う状況を作るからこそカスタマーサクセスが機能します。
ここまでに説明した通り、顧客の属性や課題にあわせた深い提案を実施することで、CSMやサービス、企業とのエンゲージメントを強化できます。しかし、機能案内など基本的なQAのコミュニケーションに終始してしまえば、顧客の自立的な製品活用を拒んでしまい、結果的に、顧客の目標達成や課題解決も実現できません。
テックタッチを導入することによって、顧客自身が自らのビジネスをドライブできるよう支援すれば、議論のレベルが高まり、顧客との関係性が強化され、より高いエンゲージメントを築けるでしょう。
テックタッチ導入の進め方
テックタッチを導入する際には、下記3つのステップで進めましょう。
- カスタマージャーニーの整理
- テックタッチの導入箇所を見極める
- スモールスタートからはじめる
まず、顧客がサービスに求める体験を、ステージごとに利用状況などを整理する必要があります。サービス利用の習熟度などによって、顧客が抱える課題や達成したい目標が異なることが一般的です。そのため、ステージごとのカスタマージャーニーを可視化し、どのようなサポートが必要なのかを見極めましょう。
次にサポートする内容が、テックタッチで実現するべきものなのかどうかを判断します。例えば、サービスの利用方法や機能説明などはCSMが実施しなくてもテックタッチで十分対応が可能です。しかし、顧客にサービスの魅力や課題解決につなげる方法などを説明する場合には、テックタッチではなくCSMが直接説明するべきでしょう。
デジタルツールなどに代替しても、顧客への提供価値が変わらないと判断できるものは、積極的にテックタッチを導入して自動化を検討します。ただし、いきなり高額なデジタルツールを導入するのではなく、無料または廉価なツールから導入しましょう。
テックタッチの導入にはコストがかかるため、まず部分的な導入からスタートして、ノウハウを積み重ねながら徐々に導入範囲を広げていくのが賢明です。例えば、FAQの整備や無料ツールを活用したコンテンツ配信、MAツールなどであれば、コストが安価に済むため比較的導入しやすいでしょう。
まとめ
本記事では、テックタッチを導入しないと困る理由について解説してきました。まず、テックタッチとは、システムやツールなどを活用して1対Nのサポートを実現するカスタマーサクセス施策です。例えば、WebサイトのコンテンツやFAQ、ウェビナー、メルマガなどが、テックタッチの事例として挙げられるでしょう。
企業がテックタッチを導入しない場合は、効果的にカスタマーサクセス施策を実施できなくなるだけでなく、顧客と質の高いコミュニケーションがとりづらくなります。また、基本的な製品案内に説明工数をとれるだけでなく、顧客が抱えている課題の本質的な解決や目標達成ができなくなります。
テックタッチを導入することにより、顧客自身が自らのビジネスをドライブできるよう支援すれば、議論のレベルが高まり、顧客との関係性が強化されます。
テックタッチを導入する際には、「カスタマージャーニーの整理」「テックタッチの導入箇所を見極める」「スモールスタートからはじめる」という3つのステップから進めることが大切です。
この機会に、まずは自社が現在抱えている顧客と行っている支援について、一度整理して振り返ってみることをおすすめします。