今すでに自社の製品やサービスを使ってくれているお客様の単価を上げるのが、
売上アップには一番手っ取り早いですよね。
以前の記事でクロスセルについては触れましたが、今回はアップセルについて解説します。
アップセルとは/アップセルのために重要な要素とは
アップセルを行う上で重要な要素
アップセルに関して非常に重要になるのが、「メニューの設計」と「料金設計」です。
アップセルとは、「これまで使っていたメニューから上位のプランにアップグレードする」ことなので、そのプロセスをどのように設計するか、を考える必要があります。
そこでポイントになってくるのが、
これは特にBtoBのSaaS(Software as a Service)の話になりますが、
「対象となるお客様によって、お財布のサイズ感が違う」ということです。
例えば、10人以下の会社がお客様であれば、なかなか使う製品やサービスに対して高いお金を払うことは難しく、決裁を取るのにも苦労するでしょう。
一方、大手企業であれば、決裁までに時間はかかるかもしれませんが、数百万円といった投資であっても、社内稟議で通すことができます。
このように、お客様によって受容度も異なるので、どのようなお客様にどのぐらいの金額で販売していきたいかを、お客様のお財布事情とニーズを捉えながら自社のメニューとして設計することで、
「正しいお客様にタイアして、正しい価格で提供する」ということができるようになります。
そのため、入口は高い金額でなくても、お客様のお財布=投資できるサイズ感に合わせた形で、自社のメニュー開発を行っていくことが重要です。
そもそも、アップセルとは?
そもそもアップセルの定義とはなんでしょうか。
お客様の利用人数が増える、という視点もアップセルの1つです。
例えばカスタマーサクセスの分野で言えば、例えばお客様企業の営業部門やマーケティング部門へ導入した後に他の部門に導入することで、従量課金として利用する人数が増えます。
その分、アカウントとしての売上が増えていくことになります。
特に大手企業向けのSaaSでは、事業部門が複数あったり、関連会社や関連部門も多数あったりするので、
「そのお客様企業へどのように入り込み、売上を総合的に高めていくか」というアカウントのプランニングも必要です。
また、お客様企業のある一部署への導入や、企業内での広がりをあまり期待できない場合もあります。
そういった場合でも、その企業の売上高や、自社サービスが提供している領域に対してどのぐらいの投資ができそうか、といった年間計画等も加味しながら、丁寧にコミュニケーションをしていくことが重要です。
大企業だと利用が広がるまでに1年かかったりするケースもありますが、総合的に色々な部門で使っていただくためのアクションが必要です。
「アップセルをしたお客様」の事例を用意する
もう1つ重要なこととしては、「アップセルをしたお客様」に関するコンテンツを用意することです。
つまり、「上位プランを契約したお客様についての事例」を作成するということです。
なぜなら、お客様の視点でアップセルを考えると、上位プランに切り替える・追加で購買するということになるため、お客様社内で稟議を通さなければなりません。
おそらく上司や、社内の検討会議等、「XXという理由があるので、この製品の上位プランを契約したいです」というような承認を取る必要があります。
すると、各部門や上司の方から「なんで上位プランを契約しなければいけないの?」といった突っ込みがあるはずで、それを担当者の方に説明をしていただかなければいけません。
その時に、例えば「他社さんであるA社さんは上位プランを契約することで、こんな効果が出ています」といった事例があることで、
「弊社でも同じようにXXに対してメリットを感じて、XXということを効果として出していきたいので、上位プランを契約したいです」
という説明をしていただくことができます。
そのため、アップセルにおいてはお客様の担当者が、社内で説明できるようなコンテンツや情報をケーススタディとして提供することが重要になるのです。
もしも事例がすぐに用意できない場合でも、「成功の絵を見せてあげる」ことも必要でしょう。
「上位のプランを契約すると、こんな良いことがよくなりますよ・こんなことを実践できますよ」といったことを、お客様がイメージできるように丁寧に説明することで、絵としてイメージが浮かびます。
お客様の担当者が社内に向けて自信満々に「絶対上位プランを契約すべきです」と説明できるような状態になるように、丁寧にコミュニケーションしていくことが重要です。
お客様の成功を定義し、褒める
お客様の「成功」の定義は提供側がリードすべき
カスタマーサクセスに関わっている方にとって「お客様の”成功”の定義は何か」ということが、よくある悩みとして挙げられます。
お客様の方で「成功とは何か」をイメージいただく、というケースもあるかもしれませんが、より鮮明に「成功」のイメージを提供すべき・提供できるのはあくまでも「製品を提供している側」だと考えています。
提供する側から、製品が目指すビジョン・夢・未来といったものをポジティブな形で言語化してあげることが重要です。
社内の「褒め文化」を醸成する
これは初歩的なテクニックかもしれませんが、「アップセルをしたカスタマーサクセス担当や営業担当を褒めてあげる」こと、つまり「褒め文化」を醸成することが、アップセルを推進する上では大変重要です。
褒め文化は、「カスタマーサクセス担当や営業担当がどのように振舞うとその企業にとって好ましいのか」の指針になるので、「アップセルをすること=褒められること」だと思ってもらうことができます。
アップセルをする上では、お客様に対して一歩踏み込んだコミュニケーションを取っていく必要があり、そういった「一歩踏み込もう」と思うような勇気・士気を高める空気作りをすることが必要です。
アップセルするときの受注率は、10%〜20%等に収束することが多く、これは裏を返せば、80〜90%の確率でアップセルを断られてしまう、ということです。
これは営業担当の方のマネジメントでもよくある話ですが、人間、わざわざ断られたり「NO」と言われるのは嫌な生き物なので、無理やりにでも鼓舞しないとなかなか「やろう」とはならない。
そのため、断られる可能性が高いとしても、10〜20%の受注していただけるお客様に対して、確実に満足いただけるのであれば、会社としてはアップセルの提案をやるべきでしょう。
それをやるための文化形成や、モチベーションを上げるための組織風土作りこそが重要だと考えます。
「お客様」を褒める
カスタマーサクセスをする上でも、「褒める」ことは非常に重要です。
社内のカスタマーサクセス担当を褒めることもそうですが、特に提供しているお客様を褒める、ということがポイントです。
優秀なカスタマーサクセス担当は、
例えば「お客様が何らかの機能の設定ができた」とか、
「機能を使ってXXがうまくいった」とか、
そのようなシーンに応じてお客様のことを褒めていることが多いです。
そういった担当は、やはりお客様にも好まれますし、お客様も褒められると「もうちょっと頑張ろうかな」と思うでしょう。
褒めること、あるいは肯定的なコミュニケーションを行うことは、アップセルはもちろん、カスタマーサクセス全般の取り組みを進める上で非常に重要だと考えます。
まとめ
自社の製品やサービスを使ってくれているお客様の単価を上げることで、売上アップにつなげるアップセル。
お客様企業のお財布事情やニーズを捉えながらアップセルのためメニューを開発していく必要性や、料金設計の重要性について解説しました。
また、アップセルをしたお客様の事例等を用意することも重要です。
お客様視点に立ち、お客様がスムーズに社内決裁できるようなコンテンツを用意した上で、お客様を「褒め」ながら、お客様のアップセルの意思決定をサポートしていきましょう。