企業において、カスタマーサクセスの取り組みによって作り出すことができる「売上」について、アップセル・クロスセルなどの考え方を中心にご紹介します。
カスタマーサクセスで作り出すことができる「売上」とは?
カスタマーサクセスの立場から作り出すことができる「売上」としては、大きく以下の2つに大別できます。
①長期契約を結んでもらう
LTV(ライフタイムバリュー)といった表現もされますが、
SaaSのようなサブスクリプションサービスや月額課金のサービスであれば、「できるだけ長く・継続して課金をしてもらう」必要があります。
一方で月額課金をしないもの、例えば小売店やメーカーであれば、
「製品を何度もリピート購入し続けてもらう」ことが、長期契約によってカスタマーサクセスが作り出すことができる売上と言えるでしょう。
②クロスセル・アップセルを働きかける
クロスセル・アップセルは、自社の「一製品」だけでなく、「複数製品」を買ってもらう・使ってもらえる状態を作ることです。
これらができているわかりやすい会社はAppleでしょう。
Appleの代表的な製品といえば、スマートフォンのiPhoneですよね。
iPhoneは毎年モデルチェンジしていますが、買い続けている人が多くいます。
Appleから学ぶクロスセル・アップセル
クロスセル・アップセルの観点で言うと、
AppleにはPCのMacやタブレットデバイスであるiPad、スマートウォッチのapple watchなど、関連商品がたくさんあります。
「iPhone」という主要製品が買われ続ける中で、他の関連商品も買われている状態なので、お客様が満足して、一企業あたりの色々な製品が購入されている状態、つまり、「お客様が成功している状態」が実現されていると言えるでしょう。
その意味では、Appleのように「圧倒的な人気のある主力製品」が存在していて、
「関連して売れる他の製品」としての良いものが揃っている状態こそが、
カスタマーサクセスとして売上をあげていくための準備・前提ができている状態と言えます。
Appleは、製品が良いのはもちろんですがカスタマーサポートも非常に丁寧です。
使いづらい・使い方がわからないといった経験があっても、「自分で手を動かして解決できる」という経験をした方も多いのではないでしょうか。
カスタマーサクセスで売上をあげる上で重要なのは「1つ圧倒的な製品を作る」ことですが、これは一朝一夕にできるような簡単な話ではありません。
まさに絶え間ない製品・サービスの改善が必要なのです。
「CO」と「CX」の考え方
カスタマーサクセスでは、
「カスタマーサクセス=CO(Customer Outcome)+CX(Customer Experience)」
という考え方があります。
CO(カスタマーアウトカム)とは?
CO(カスタマーアウトカム)は、「顧客が期待している成果・結果よりも卓越し成果を出す」ことです。
例えばライザップはわかりやすい例で、
「ライザップを契約する=圧倒的に痩せられる」という、「期待していることにコミットする」と言う意味で顧客にとってわかりやすいですよね。
飲食点であれば食事が美味しい、アパレルだったら圧倒的におしゃれ・かっこいい、PCだったら圧倒的に使いやすい、といったように、顧客が期待している成果・結果を超える成果を出せるような、製品を作ることが重要です。
CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?
CX(カスタマーエクスペリエンス)は、ただ製品がいいだけではなく、「顧客体験」も重要であるという考え方です。
Appleのカスタマーサポートでは素晴らしい体験をすることができます。
一方で、一度お客様の体験で不満を与えてしまうと、体験そのものがマイナスになってしまい、お客様は離れて行ってしまいます。
どんなに美味しいレストランでも、店に入って挨拶がない、床が汚い等接客やお店の清潔感がないと、リピートされません。
成果だけでなく「結果が出るまでの体験を顧客の記憶に残す」ということが重要なのです。
Appleで言えば、Apple製品を販売する実店舗であるApple Storeにも逸話があります。
Appleの共同創業者でありiPhoneの開発を主導したスティーブ・ジョブズがApple Storeを作る際、高級ブランドのショップにかなり足を運んだそうです。
実際に高級ブランドのショップに行き、店舗の入り口でどのような挨拶をされるのか、どのように掃除しているのか、どのように商品を飾っているのか等を視察していたといいます。
自分の身を持って顧客としての体験をして、カスタマーエクスペリエンスを研究した上で、Apple Storeにもそのエッセンスを導入するようマネジメントしたのです。
自社の「製品」と「サービス体験」両方に投資する
上記のことからわかるのは、「製品開発」と「製品のサービス体験の改善」の両方に投資していく、そして頭を使っていくことの重要性です。
「圧倒的」は製品そのものの良さもあるけど、サービスや体験の良さも重要と言えます。
また、自社で使っているサービスの問い合わせをしてサービスを受けてみて、自社が提供しているサービスを見つめ直すといったこともやってみると良いかもしれません。
「ビジネス研修としてディズニーに行く」といった会社もあるように、他社の優れたサービス体験を自分で身を持って体験して、自社に生かしていくことが必要です。
単独製品+他の複数製品の作り込みの重要性
繰り返しになりますが、カスタマーサクセスとして売上を上げていくためには、
1つの製品がまず圧倒的でリピートされる状態を作り出すことが大事ですが、
単独製品だけでなくて他の複数の製品もしっかり作り込んでいくことが企業活動において重要です。
例えばGoogleを例にあげてみましょう。
Googleは、検索エンジンからスタートしていますが、メールサービスのGmail、ブラウザのChrome、スマートフォンOSであるAndroid、動画共有サービスのYoutube、地図情報サービスのGoogle Mapsなど、複数のプロダクトをGoogleブランドとして持っています。
企業経営の形として見てみると、ベンチャー企業、特に急成長している企業は新規事業やM&Aを行って積極的に新領域への投資を行っています。
投資を行う上で、優秀な人材を採用し、新規事業を興して「1製品だけでなく複数製品で企業活動を進めていく」といった気概をもって推進している会社が多いです。
「クロスセル」と簡単に言うことはできるのですが、その前提となる「複数の優れた製品を自社で揃える」という状態を作るのはめちゃくちゃ大変です。
そのため、クロスセルの話をする際には、「やり方や売り方」というよりは、「前提となる製品開発」の方がより重要度も難易度も高くなるのです。
日本の会社だと、どのような事業を自社で揃えるかは経営企画部門が考えていることが多いでしょう。
その中では、事業シナジーを産むような、「1つの製品に付随した、いい感じの粒度の複数製品」を揃えていくことが重要です。
日本の1980年代のバブル期であれば、よくわからないリゾート地を買ったりゴルフ場を買ったり、自社と事業シナジーを産まないような例が多くありました。
そうならないように、ブランドのアイデンティティを体現できるような良質な事業を作って、1つの製品でカスタマーサクセスを実現していくべきでしょう。
そして、複数製品を総合的に販売して結果的に売上を最大化する、ということが、カスタマーサクセスとして、また企業経営としての本来の在り方なのではと考えます。
まとめ
カスタマーサクセスとして売上を上げる方法として、冒頭に下記の2つをご紹介しました。
- 長期契約を結んでもらう
- クロスセル・アップセルを働きかける
特にクロスセル・アップセルを行う上では、単独の製品の作り込みはもちろん、他の複数製品をしっかり作り込んでいきながら、同時に「顧客体験」にも投資すべきであると解説しました。
顧客体験については、カスタマーサクセスにおける考え方として「CO(カスタマーアウトカム)」と「CX(カスタマーエクスペリエンス)」の考え方についてもご紹介しました。
カスタマーサクセスに取り組まれる方は、顧客に最も近い立場で接することができると思いますので、顧客の声を拾い上げながら、顧客が期待している成果・結果を超える成果を出せる製品開発、そして顧客の記憶に残る体験をいかに作っていくかについて、考えていただければと思います。