顧客の購買プロセスを促進する「バイヤーイネーブルメント」とは? 実践のポイントを解説

  • 公開日:2024年5月27日(月)

近年、BtoBのセールス&マーケティングの領域で注目されているキーワードに「バイヤーイネーブルメント」があります。聞き慣れない言葉かもしれませんが、これからのデジタル時代の営業活動に欠かせない重要な概念といえるでしょう。

本記事では、バイヤーイネーブルメントとは何か、従来のセールスイネーブルメントとの違い、実践のポイントなどを徹底的に解説します。顧客の購買プロセスに寄り添い、効果的な営業活動を行うヒントが得られるはずです。

バイヤーイネーブルメントとは

バイヤーイネーブルメントとは、顧客の購買担当者(バイヤー)の意思決定プロセスを促進するための情報提供や支援活動のことです。

従来、営業活動というと自社の製品・サービスの魅力を一方的に訴求することに重きが置かれてきました。しかし、デジタル化の進展によって、顧客は購買前から積極的に情報収集を行い、課題解決に適した製品・サービスを選定するようになっています。

こうした顧客主導の購買プロセスに対応するためには、営業担当者が顧客の意思決定プロセスに寄り添い、適切なタイミングで適切な情報を提供し、意思決定を後押しすることが求められます。それがバイヤーイネーブルメントの本質です。

具体的には、以下のような取り組みがバイヤーイネーブルメントに含まれます。

・顧客の課題や要件に即した製品情報、事例、ホワイトペーパーなどの提供 ・顧客の課題解決や投資対効果の試算に役立つツールの提供
・顧客社内の意思決定プロセスや関係者を理解し、意思決定を促進するための情報提供 ・トライアルの実施支援や運用相談など、導入前の不安を払拭する取り組み

つまり、単に自社製品の機能や価格を説明するだけでなく、顧客視点に立って、意思決定に必要な情報を丁寧に提供し、購買プロセスを円滑に進めることが重要なのです。

バイヤーイネーブルメントとセールスイネーブルメントの違い

バイヤーイネーブルメントと混同されやすい概念に「セールスイネーブルメント」があります。セールスイネーブルメントとは、営業担当者の育成や営業活動の効率化・自動化により、組織としての営業力を高める取り組みのことです。

例えば、以下のようなものがセールスイネーブルメントに含まれます。

・営業トークの標準化や営業マニュアルの整備 ・営業ナレッジの共有・活用の仕組み作り
・顧客管理(CRM)や営業支援(SFA)など営業ツールの導入・活用 ・リードナーチャリングの自動化やインサイドセールスの強化

このように、セールスイネーブルメントは営業組織の効率化・強化に主眼が置かれており、あくまで「売り手」である営業担当者の視点に立った取り組みといえます。

一方、バイヤーイネーブルメントは「買い手」である顧客の視点に立ち、顧客の課題解決や意思決定を支援することに主眼が置かれています。営業プロセスではなく、顧客の購買プロセスに対するアプローチという点が大きく異なります。

もちろん、両者は相反する概念ではなく、セールスイネーブルメントで整備した営業ナレッジやツールを、顧客視点で編集・活用することで、バイヤーイネーブルメントにつなげることも可能です。売り手と買い手、双方の視点を持つことが今日の営業組織には求められています。

バイヤーイネーブルメントを実践するための3つのポイント

それでは、バイヤーイネーブルメントを実践するための具体的なポイントを3つ挙げていきます。

① 顧客の購買プロセスと情報ニーズを理解する

バイヤーイネーブルメントの前提となるのは、顧客の購買プロセスと情報ニーズを深く理解することです。

多くの場合、BtoB製品・サービスの購買プロセスは以下のような流れをたどります。

(1) 課題の認識 (2) 解決策の検討 (3) 候補となる製品・サービスの比較検討 (4) 予算や投資対効果の試算 (5) 社内関係者への説明・稟議 (6) 契約・発注

それぞれのフェーズで、顧客が必要としている情報は異なります。例えば、課題認識のフェーズでは業界動向やベストプラクティスに関する情報、候補の比較検討フェーズでは自社製品と競合他社製品の違いや導入事例、社内説明のフェーズでは投資対効果の試算資料など、タイムリーに適切な情報を提供する必要があるのです。

このように、顧客の購買プロセスをきめ細かく理解し、フェーズに応じて過不足のない情報提供を行うことが、バイヤーイネーブルメントの第一歩となります。そのためには、営業担当者一人ひとりが顧客の状況を適切に把握し、定期的なコミュニケーションを通じて情報ニーズを汲み取ることが重要です。

② 意思決定に必要な情報を整理・体系化する

次に必要なのは、顧客の意思決定に必要な情報を整理し、体系化していくことです。

具体的には、以下のような情報をコンテンツ化し、営業担当者間で共有・活用できるようにしておくことが求められます。

・業界動向や市場調査レポート ・自社製品と競合他社製品の比較資料 ・ユースケースや導入事例集 ・TCO削減や投資対効果の試算ツール ・想定されるQ&Aや説明用トークスクリプト ・デモ環境や評価版の準備

特に、顧客への説明力を高める上では、自社製品の価値を定量的に示すROI試算資料や、類似案件の事例資料が有効です。さらに、顧客の関心に合わせて、機能面や運用面、セキュリティ面などの切り口から、きめ細かく製品価値を訴求できるようにしておくことも大切です。

コンテンツの整備にあたっては、営業だけでなくマーケティングや製品開発など関連部署とも連携しながら、顧客視点に立った「伝わる」「腑に落ちる」情報を準備していく必要があります。

③ 個客に合わせた情報提供と意思決定支援を行う

最後に重要なのは、それぞれの顧客の状況に合わせた情報提供と意思決定支援を行うことです。

整理・体系化した情報を、顧客の業種や職種、意思決定フェーズに合わせて編集し、適切なタイミングで適切な関係者に届けることが求められます。

具体的な施策としては、以下のようなことが考えられます。

・メール・電話・対面などの多様なチャネルを使い分けた情報提供 ・意思決定者や経営層など関係者を特定し、職位に合わせた説明資料の準備 ・社内意思決定プロセスを理解し、進捗状況に合わせた情報提供のタイミング設計 ・評価環境やトライアルの提供など、導入前の不安払拭に向けたハンズオン支援

バイヤーイネーブルメントにおいては、顧客との対話を通じて得た気づきを、タイムリーに情報提供や意思決定支援に反映していくことが重要になります。顧客リレーションを深め、信頼される良きアドバイザーとしての立ち位置を確立することが、営業担当者に求められる役割だといえるでしょう。

まとめ

以上、バイヤーイネーブルメントについて、その概要と実践のポイントを説明してきました。

従来の営業は「いかに売るか」という発想が中心でしたが、デジタル時代のBtoBマーケティング・セールスでは「いかに買ってもらうか」という発想の転換が必要です。

単なる説明や押し売りではなく、顧客の課題解決や意思決定プロセスに寄り添う「伴走型」の営業スタイルへのシフトが求められているのです。

バイヤーイネーブルメントは、従来のセールスイネーブルメントの延長線上にありつつ、「買い手」の視点に立った革新的なアプローチです。営業とマーケが一体となって、効果的な情報提供・意思決定支援を行う体制を作ることが、今日の営業組織に求められる大きな変革の一つだと言えるでしょう。

製品を買いたいと思ってもらうことが何より大切です。ぜひ、本記事を参考に、顧客起点の営業活動にチャレンジしてみてください。

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