ビジネスにおけるゴールは大きな収益を上げることですが、そのために必要な取り組みは数多くあります。そして、それらが上手くいっているかどうかを評価するために必要なのがKPIです。事業上の目標をKGIとして定め、そこから逆算してKPIが設定されます。
カスタマーサクセスにおいても、KPIを定めて活動を評価することはもちろん重要であり、さまざまな指標が用いられます。
この記事では、カスタマーサクセスにおけるKPIについて、その考え方から、特に重要な指標まで解説します。
また、実際のKPI設計や測定の方法など具体的な方法に関してはこちらのEbookでも詳しく解説しています。あわせてご一読ください。
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カスタマーサクセスではKPIをどうとらえるべきか
まず初めにカスタマーサクセスにおけるKPIの考え方、種類について解説します。
カスタマーサクセスにおけるKPIの考え方
カスタマーサクセスの目標は顧客の成功を実現することですが、経営視点から見ると、これはLTV、MRRなどの利益に繋がる数値を向上するための取り組みです。つまり、カスタマーサクセスにおいては、LTVやMRRをKGIとして設定し、そこからKPIを設定していくということになります。もちろん、組織によっては解約率や売上継続率など、別の数値をKGIとして設定することもあります。
また、KPIはKGIに対して完全に並列に存在するわけではなく、あるKPIの達成のためにサブKPIを設定するというように、ツリー上に連なり、よりKGIに直結するものから詳細なものまで、数多く設定されるのが一般的です。
先行指標と遅行指標
KPIを正確に理解し取り組みに活かすためには、先行指標と遅行指標についても考える必要があります。まず、それぞれの大まかな特徴を確認しましょう。
先行指標
取り組みの最中に計測することが可能で、リアルタイムでの改善に役立つ指標です。カスタマーサクセスでは、ヘルススコア、利用率、NPSなどが当てはまります。
適切に分析できれば有用な指標ですが、ヘルススコアを筆頭に一般化が難しいものが多く、取り組みの成功/失敗に対して確かな因果関係があるデータは企業や組織ごとに異なり、定義が難しいという点には注意が必要です。
遅行指標
取り組みが終わった後に、結果として現れるのが遅行指標です。売上、解約率、NRRなどが当てはまります。見るべきデータがわかりやすく、明確な成果を確認することができますが、進行中の取り組みの改善には役立たないのが特徴です。
実際のカスタマーサクセスの推進においては、ヘルススコアや利用率、NPSといった先行指標を定常的に分析して支援を改善しながら、年単位の中長期でKGIおよびそれと関わる遅行指標で取り組みを評価するという扱い方が良いでしょう。
カスタマーサクセスで重要な8つのKPI
次に、カスタマーサクセスで頻繁に用いられる8つのKPIについて、それぞれ解説します。
①オンボーディング完了率
サービスの初期設定やチュートリアルなどを完了しているユーザーの割合を表します。
利用開始から運用の定着までのオンボーディング期間で、操作に慣れ、サービスを理解できているかどうかは、その後の活用率や成功に影響するため、重要な指標です。
②ログイン日数
ユーザーがサービスにログインしている頻度や期間を表します。
サービスの活用度合いを端的に確認することができます。この数値の低いユーザーや顧客に対しては、個別にアプローチし、改めて活用の土台を作り直す必要があるでしょう。
③ヘルススコア
ログイン状況や利用状況など、複数のデータを組み合わせて顧客のサービスの活用度合いを表します。
ログイン日数とも近い指標ですが、より複合的に顧客の状態を把握する際に利用します。どのようなデータを見るかは企業、組織によって異なり、自社に合った内容を定義する必要があります。
④NPS(ネット・プロモーター・スコア)
アンケート形式の調査で、サービスへのロイヤルティを数値化する指標です。
多数の顧客に「サービスを他者におすすめしたいかどうか」を0〜10のスコアで回答してもらい、その割合でスコアを算出します。ロイヤルティを測る指標として広く知られ、業績との相関性も大きいことから、頻繁に用いられます。
⑤CSAT(顧客満足度)
アンケート形式の調査で、サービスへの満足度を数値化する指標です。
顧客に対して「サービスに満足しているかどうか」を5〜10段階で回答してもらい、その割合を算出します。NPSとよく似ていますが、どちらかと言えば「顧客の要望に応えられているか」を示し、タイミングによっても変動しやすい傾向にあります。
⑥アップセル・クロスセル率
特定の期間において、アップセル(プランのアップグレード)・クロスセル(関連サービスの契約)を行った顧客の割合を表します。
客単価に直接的に影響を与え、上に挙げた利用度合いやロイヤルティ、満足度などの結果が現れる指標でもあります。
⑦解約率(チャーンレート)
特定の期間において、解約をした顧客の割合を表します。
収益やKGIの数値に直結するため、カスタマーサクセスにとって重要なKPIのひとつです。アップセル・クロスセル同様、利用度合いやロイヤルティ、満足度などの結果が現れる指標で、数値が悪い場合には支援全体の見直しが不可欠になります。
⑧NRR(売上継続率)
既存顧客からの売上を前年比でどの程度維持できているかを表します。
アップセル・クロスセルや解約の結果も含まれ、売上成長率とも相関がある指標として、サービスや事業全体を評価するのに役立ちます。この数値が100%を超えていれば、既存顧客との関係を良好に保てていると評価して良いでしょう。
カスタマーサクセスがKPIを活かすためのポイント
ここからは、カスタマーサクセスがKPIを上手に利用し、支援に活かすためのポイントについて解説します。
KPI分析の環境を整える
KPIを定期的に確認、分析するためには、まずはデータを適切に利用できる環境づくりが必要です。どこからデータを収集するか、抽出したデータをどのように加工するかを定義した上で仕組み化し、いつでも正確な分析ができるようにします。
後に紹介するプラットフォームやツールなどを利用するのも良いでしょう。
顧客コホートごとに分析する
顧客をいくつかのグループに分けて分析することは、取り組みの正確な評価に役立ちます。コホートとは共通の因子を持った集団を示します。
カスタマーサクセスのKPI分析においては、チャーンやアップセル・クロスセルの有無、NPSなどの指標から「成功の見込みの大きい/小さい顧客」「うまくいっている顧客/いっていない顧客」などに顧客を分類し、それぞれに対して詳細な分析をすることが効果的です。
うまくいっている顧客とそうでない顧客グループそれぞれのKPIの数値を比べた時に、有意に差がある項目があれば、そこに原因がある確率が大きいと言えます。例えばそのKPIがオンボーディング完了率だとすれば、オンボーディングにおける支援の仕方を見直すといったように、より具体的にボトルネックになっている取り組みの内容を把握し、改善することができます。
カスタマーサクセスプラットフォームを導入する
最近では、カスタマーサクセス専用のプラットフォームサービスもいくつか登場しています。こうしたサービスを利用することで、KPIに必要なデータの収集や加工といったプロセスの効率化はもちろん、ダッシュボードや統計などの機能を用いたわかりやすい比較や分析なども可能になります。
その他テックタッチの実現や顧客管理などにも利用できるため、カスタマーサクセスの成果を最大化するために導入を検討してみても良いでしょう。
まとめ
今回は、カスタマーサクセスのKPIについて解説しました。カスタマーサクセスのゴールは顧客の成功と言われますが、経営視点で言えば、LTVやMRRの向上を数値上の目標としています。そして、そこから逆算してヘルススコア、NPSや解約率など、詳細なKPIを設定していくのです。
実際の運用では、KPI分析に必要な環境を整え、定期的に数値を確認することで、支援やサービスを常に改善することが重要です。それによって、長期的には多くの顧客の成功に繋がるでしょう。