【知って損はない】いつか新規サービスを担当する日の為に。

  • 公開日:2023年1月22日(日)

 

 

今回も、NE株式会社マーケティング統括部の甲斐 愛佳(かい まなか)様をゲストにお招きして、Openpage代表・藤島との対談形式でお送りします。

会社で新規サービスが立ち上がり、「このサービスのカスタマーサクセスの立ち上げをよろしく!」と頼まれた・・・そんな時、一体何から始めるべきでしょうか?
カスタマーサクセスでは顧客とのコミュニケーション方法としてハイタッチ・ロータッチ・テックタッチなどさまざまなやり方がありますが、
事業のフェーズによっても取るべき施策は異なります。

今回は、特に「ハイタッチとテックタッチのバランス」をどう取るべきかという観点から、カスタマーサクセスの施策のあり方について解説します。
(以下、敬称略)

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「ハイタッチとテックタッチのバランス」をどう考えるべきか?

事業の立ち上げ期はハイタッチ、その後は組み合わせで対応

甲斐:
ハイタッチとテックタッチのバランスをどういった形にしていくのがいいと考えていますか。

藤島:
悩まれるポイントですよね。

一般的には、事業の立ち上げ期はまずハイタッチからスタートし、
その後「ロータッチ」→「テックタッチ」→「コミュニティタッチ」という順番で、「線」にしていきます。

事業の立ち上げ期は「機能が足りない」「バグが出る」など、そもそもプロダクト自体がまだまだ未熟です。
プロダクトの未熟さをカバーする意味でも「人」の力が物を言うフェーズですので、
特に「ハイタッチが非常に重要になる」と言えます。

フェーズや年数が経過するにつれて、未熟だったプロダクトの品質はどんどん上がっていきます。
そうすると、「人」によるカバーがなくとも、プロダクト自体で十分な成長を実現していくことが可能になります。

「プロダクト単体でできること」を増やす

藤島:
プロダクトが成熟するにつれ徐々に「ハイタッチの比率」は下がっていき、
「プロダクト完結で出来ること」が増えていくことが理想形だと考えています。

実際に、私は海外のSaaSツールの「カスタマーサクセスのコスト」を計算するブログや投稿をよく見ます。
こうした投稿を見ていても、プロダクトのローンチ後、
年を経るごとに「カスタマーサクセスにかかるコスト(人件費など)」はどんどん下がっています。

カスタマーサクセスが上手くいっている会社は効率化がされていき、
CSOps(Operations)業務等をうまく進めていくことが可能になりますので、
「ハイタッチをしなくてもお客さんが勝手にプロダクトを上手に使ってくれる」という状態が実現していきます。

そのため、カスタマーサクセスにおける「ハイタッチの人件費」が下がっているのです。

これまでのお話を整理すると、
プロダクトローンチ直後等、初期フェーズではハイタッチのコミュニケーションを厚めにし、
プロダクトの成長と併せて、徐々にコミュニケーションのバランスを変えながら、
「プロダクト単体で出来ることを増やしていく」ということが理想形だと考えています。

甲斐:
確かに、ロータッチやテックタッチを行う上で、
自社のコンテンツ等を作成していく上では、「ハイタッチで集めた情報を(そういったコンテンツに)還元していく」ことがセオリーでしょう。

ハイタッチでのコミュニケーションしていた内容を、ロータッチやテックタッチにおいて活用するコンテンツとして引き出すことに成功すれば、
比率が変わっていく(ハイタッチの比率が徐々に下がっていく)のにも納得できます。

究極の「理想形」はSalesforce!?

藤島:
例えばSalesforceを例に挙げると、
Salesforceのお客さん(導入する企業)の中でも「Salesforceに追加でお金を払ってでも、ハイタッチでサポートしてほしい!」という企業さんがいらっしゃいます。

こうした場合に、基本的にはテックタッチやロータッチ(セミナー・研修等)でのサポートを受けることをデフォルトとし、ハイタッチでのサポートは「オプションメニュー」として有償化される、というケースもあります。

「人による手厚いサービスが必要であれば、人件費がかかるので別料金で提供しますよ」という形ですね。
そして、これこそがSaaS事業の「最終的な価格プラン」のイメージだと言えるのではないでしょうか。

仮に、ハイタッチが前提の月額5〜10万円のプロダクトがあると仮定しましょう。
この事業は、ハイタッチ前提のため人件費の比率が大きくなっており、おそらく事業としては赤字です。
そしてこの企業ではきっと、「ベンチャーキャピタルから調達したお金を日々削っていかざるを得ない」利率構造になってしまっているはずです。
こういった状況は企業・事業として健全とは言い難い状況です。

さらに追い討ちをかけるのは、昨今のSaaS企業のバリュエーション(時価総額)の低下です。
バリュエーションが低下し追加の資金調達がしづらくなるため、
事業に人を投下することがコスト構造的に難しくなってしまい、新しい人員の採用も出来なくなってしまいます。

SaaSの経営者の方々とお話しをすると、
本音では「カスタマーサクセスの人件費にはコストをあまり割きたくはない」
「なぜ人件費にこんなにコストを割く必要があるのか」
と考えている会社さんも多く見られます。

現場としてはハイタッチをやりたいけれども、
経営的にはハイタッチにあまりお金を割きたくない、
出来ればどんどん営業やマーケに人件費を割いてやっていきたい、というのが本音なんだろうと感じます。

ハイタッチが必要とされるところにハイタッチのリソースを割ける体制を作る必要性

甲斐:
そのミスマッチもありますね。
なるべく「ハイタッチを求めている領域やお客様に、ハイタッチのリソースを充てられるように」していくことが理想形だと言えます。

藤島:
一方で、SaaSは特に日本国内での競争環境が激化しており、他社との競争の中でツールが選ばれます。

競合他社がハイタッチ的な手厚いサービスに力を入れている状態で、
「うちはテックタッチです!」というスタンスで対抗すると、顧客目線ではどうしても選ばれづらいサービスになってしまいます。

人のサービスや提案は要素としては残す必要はありますが、
とはいえ「100%フルで人のサービス・提案に振り切る」ことは、コストの観点からも事業体としては難しいでしょう。

だからこそ、CSOps的な役割を上手く機能させて、ハイタッチのコミュニケーションにおける業務効率化を図りながら、
「やるべきところにハイタッチでちゃんとアクションを起こす」ことこそが、あるべき姿なのではと考えています。

甲斐:
お客さんの声を聴いていても、セールスやマーケティングの現場で、
「担当が付いてくれて伴走してくれるか?」をポイントにされているお客さんも結構います。

それがお客さんにとっての一つの安心材料になり、契約に至ることもまだまだ多いですよね。
こうした、お客さんサイドの意識にもギャップはあるのかなと感じます。

藤島:
例えば「イケてるベンチャー企業」にホリゾンタルSaaSを導入しようという場合は、
お客さんが「イケてる企業」なので、お客さん側でどんどんツールの利用が進み、ハイタッチでのサポートが不要になるケースもあります。

一方で、業界特化型(バーティカル)のSaaSツール、例えば建築業向けのSaaSツールや医療業界向けのSaaSツールなどであれば、
お客様のITリテラシーが高くないケースも往々にしてあります。

こういったケースでは「人」によるサービスを求めるお客さんが多くなるため、
ハイタッチをうまく織り交ぜた形で事業を継続する形を考えないといけません。

甲斐:
弊社もECというバーティカルな分野でのカスタマーサクセスに取り組んでいるので、
まさにバランスをどう持っていくかというのは色々試行錯誤しないといけないなと思います。

藤島:
とはいえ「全部ハイタッチ」というのは本当に難しいので、
だからこそカスタマーサクセスのツールは、SaaSの最先端市場である米国でも取り入れられているのかなと考えます。
例えばSaaS企業が「ヘルススコア」をツールとして導入している理由は、「お客さんのフォローに優先度をちゃんとつけるため」です。

最近だとヘルススコアだけではなく、
そこから「そのお客さんにどういうアクションをするか」まで事細かく定義して、
「こういう風にやってください」「メールも自動で打ちます」といった提案を行うツールも出てきています。

弊社openpageでも、「人の代わりにAIが喋ってくれる」テックタッチツールを開発しています。
デジタルによってハイタッチ的な案内を行う、といった施策も織り交ぜながら、
デジタルとハイブリッドだけれども、「人の温かみ」などの感情的な部分を残していく、ということが現実的な着地ポイントになると考えます。

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