今回も、NE株式会社マーケティング統括部の甲斐 愛佳(かい まなか)様をゲストにお招きして、Openpage代表・藤島との対談形式でお送りします。
カスタマーサクセスは顧客の成功を支援する重要な職種ですが、
見込み顧客を創出するマーケティング、その顧客にアプローチして契約を獲得するセールスとの連携が不可欠です。
連携をするためにはそれぞれの職種の相互理解も不可欠ですが、
日々の業務に追われるとどうしてもブラックボックスになってしまっている、という方も多いのではないでしょうか。
今回は、マーケティング・セールス・CSといった各職種が相互理解を深めながら連携していくためのポイントについて解説します。
(以下、敬称略)
これまでの甲斐さんとの対談記事
・【新時代】エンジニア考案のカスタマーサクセス成功法って?!
・【超ハイレベル】ヘルススコアはコツコツ集計している場合ではない!
・【新世代】CSOps女子が教える、カスタマーサクセス最前線!
・【ECで稼ぐ】Amazon/楽天はカスタマーサクセスが命!
・【プロの凄ワザ】カスタマーサクセスのデータ整理法!
マーケティング〜セールス〜CSの一連のプロセスで協力していくためには?
マーケティング×CS観点:CSはもっとマーケに協力すべき!
甲斐:
これまでのお話の中で、エンジニアとカスタマーサクセスの関係構築についてお話ししてきましたが、
マーケティング〜セールス〜CSが一体となって協力していくという観点で、何か取り組まれていることはありますか。
藤島:
「マーケティングとセールス」「マーケティングとCS」等、どう考えるかでちょっと変わってくるかなと思います。
カスタマーサクセスのマーケティングの観点で発信をしていて感じるのが、
「カスタマーサクセスの職種の方がもっとマーケティングに協力するといいのに」ということ。
マーケティング活動は「リード(見込み顧客)をどう獲得するか」という話だと思いますが、
「お客様がその自分の連絡先を渡してでも聞きたい情報=その分野で役立つ情報」ですよね。
例えば、
「全部物流の効率化についてとても詳しいです!」
「会員データをいろいろ繋がってるものを一つ管理する方法なら任せてください!」
といったCS担当者の方も少なくないはずです。
こういったトピックについて「自分の連絡先を渡してでも聞きたい」と思うEC担当者の方は多いと思うのです。
以上のことから、「マーケティングとカスタマーサクセス」という観点であれば、
カスタマーサクセスが持っている成功ノウハウをもっと「マーケティングのコンテンツ」として発信すべきなのかなと考えています。
マーケティング×セールス観点:取引のヒステリーを見える化しよう!
藤島:
次に、「マーケティングとセールス」という観点であれば、
「マーケティングで用意しているコンテンツを、セールスの方があまりうまく使えていない」という状況をよく見ます。
自社の「役に立ちそうなコンテンツ」を見て資料請求したお客さんに対して、
”普通に”テレアポをしてしまい、
”普通に”製品説明してしまうというケースです。
これら一連のフローが「ひと続き」になることが理想的だと思っています。
お客様がすでにコンテンツを読んでくださっているとすれば、
・なぜそのコンテンツを読んでいるのか?
・コンテンツを読んだ背景にはどのような課題や興味関心があるのか?
・コンテンツを読んで満足したかどうか?
といった点が、話の取っ掛かりになると思います。
つまり、「うまく地続きに、お客様とちゃんと話ができるようにする」ということが大事だと思うのです。
甲斐さんが取り組まれている「CSのデータ基盤」という話とも少し違いますが、
マーケティングの観点でいえば、下記の点は「ひと続き」のコミュニケーションラインだと考えています。
「お客様がどのようなコンテンツに接点を持って、リードとして登録されているのか」
「その後商談としてどのような話をして、何にアンテナが立って、製品を検討して導入に至ったのか」
「導入したお客様の属性や、そのお客様が社内のどんな方を説得して導入できたのか」
「担当の方はどんなモチベーションを持っているのか」
これらのコミュニケーションの履歴をちゃんとデータとして落としてあげて、
誰が見ても「このお客様は誰が、XXという背景で問い合わせをされて、XXという経緯で取引がスタートして、今XXという状態だな」といった、取引ヒストリーが見える状態が好ましいですね。
甲斐:
そうですね、やはりマーケティング〜セールス〜CSという風に、
ユーザーのデータがぶつ切りにならないで、一貫して繋がっていくことが大事かなと思います。
「今の情報」だけを見ると、”Aさんというお客様”と”Bさんというお客様”が「同じ」に見えることもあると思います。
どのコンテンツを見て問い合わせされたかの「入り口」や、
「最初に接触した人とのコミュニケーション」が違えば、製品へのイメージや期待値も変わってきます。
そういったところはコミュニケーションをちゃんとわかっていないと、
良いもの・良い顧客体験は実現できないかなと感じます。
自分の職種以外の理解を深めるためには?
他の職種の「入社時研修」を受講してみる
藤島:
他の企業の話を聞いていいなと思ったのが、
「横の職種の入社時研修をあえて受けに行く」取り組みですね。
例えばマーケティング担当がカスタマーサクセスの研修を受ける、といった形です。
カスタマーサクセスの研修では、
具体的に「製品のセットアップをどうすればうまくいくのか、自分でやってみよう!」といった内容も多いと思います。
マーケターの方がこういった研修を受けると、
「カスタマーサクセス観点だとこの部分ちょっと使いにくそうだな」
「この部分、大変そうだな」
「この部分でお客様がつまづくだろうから改善しないといけない」
といった点がわかってきます。
さらに、カスタマーサクセスの大変さもわかりますし、
「製品のXXという部分は便利だな」ということがわかってきますので、
ツールの便利さやCS対応の大変さを加味した形で、
より「実態に即したマーケティングコンテンツやLPを作る」ことに繋げられると思います。
私自身も、かつてカスタマーサクセスセールスも何もやってない企業に、
マーケティング担当として入社した経験がありますが、その時は本当に大変でした。
自分自身が製品・機能の利用方法をよくわかってないし、
「お客さんになぜ導入されてるかの理由もわかっていない」状態で、
マーケティングのリードを集めるためのコンテンツを作るという状態でした。
想像力が働かず「お客様に何を伝えればいいんだろう・・・」と悩むこともあったので、
うまく職種同士で交流して相互理解を図れるような教育コンテンツを整備することは重要だなと感じています。
甲斐:
そうですね。
マーケとしてもお客様の解像度は高い方がやりやすいですし、
解像度が高い方が、お客様に響くものも作りやすい。
顧客の情報を一番よく知ってるのはCSですので。
もちろんマーケティング・CS間で会話することも重要ですし、
研修に相互参加できることも良い取り組みだと思います。
カスタマーサクセスはもっとセールスをやるべき!
藤島:
逆に、カスタマーサクセスの人はもっとセールスをやって、知った方がいいかなと思います。
僕は最近「カスタマーサクセスも売上を追うべきだ」とよく言っているのですが、
たまにカスタマーサクセスの方から反発されることもあります。
とはいえ、カスタマーサクセスは「継続による契約の売り上げ」「契約拡大による売り上げ」のために設置されている職種なので、
そのために「営業活動」は絶対必要になってくると思っています。
最近感じるのは、カスタマーサクセスの方の「契約促進」等の機能が弱くなってしまい、
いわば「お役立ちサポート担当」のような機能になってしまっていること。
「お役立ちサポート担当」となることはそれはそれで素晴らしいのですが、
それ自体が目的ではなくて、サポートをうまくやることによって契約が継続する・中長期の契約になっていく。
その過程で、例えば追加機能の利用を増やしたり、使ってもらうサービスを増やすことによって、契約金額そのものも増やしていく。
カスタマーサクセス部門はこういった財務的な売上を介して次の投資をしているわけなので、
カスタマーサクセスも「セールス活動へのコミット」に強く意識を持った方がいいと思います。
その意味では、カスタマーサクセスだけしかやったことがない方は営業力が落ちてきてしまうと思いますので、
そういった方には一時的に営業職に異動していただいて、
実際に商談をして契約を取ったり、契約を取るためのクロージングや提案等のスキルセットを身につけた方が、
会社全体の観点からも健全だろうと感じています。
甲斐:
確かに、CSとしてユーザーの方を支援するという側面も必要な一方、
何かを提案して、売り上げに繋げていくというのは、提案力・営業力も必要で、
その両面を使い分けられるとカスタマーサクセスとしてはめちゃくちゃ強いですね。
藤島:
そうですね。
サポートやコンサルもできるし、ちゃんと売り上げを立てる営業活動もできる、
その「どっちもできる状態」がやはり望ましいです。
そのためのスキル獲得の面で職種をハイブリッドするための異動や研修を考えることも必要だと思います。
Salesforceさんでも、あえて自分の職種とは関係ない別の職種の会議に出てもらったり、
あえて別職種の研修も受けてもらうことで、その方のスキルを広く高めていくことを狙っているようです。
甲斐:
マーケティングがやっているミーティングと、カスタマーサクセスがやっているミーティングだと、
会議の雰囲気ひとつとっても全く違うと思います。
まずは手始めにちょっと参加してみる、お客さんとの商談に参加してみるといったことは、
手軽に始められていいのではないでしょうか。
藤島:
あとは「KPI」や「OKR」など、会議で話している具体的な内容を可視化しておいて、
社内のナレッジサイトやポータルサイトで「参照できる状態」にしておくこともポイントです。
これすらない状態だと、お互いが何をやっているかわからない状態で仕事を進めることになるので、
それぞれの職種が定量的、定性的含めどういった目標を追っているのかという相互理解を深めることは重要です。