今回も、NE株式会社マーケティング統括部の甲斐 愛佳(かい まなか)様をゲストにお招きして、Openpage代表・藤島との対談形式でお送りします。
甲斐さんは、エンジニアとしてのご経験も活かして、カスタマーサクセスの取り組みを行う上でデータの活用を推進されています。
今回は、データ活用を行う上で重要な「データ整理」のやり方や、そのベースとなる「データ基盤」のあるべき姿についてお伺いします。
「そもそもデータ活用って何からやればいいの?」という方にも、おすすめです。
(以下、敬称略)
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カスタマーサクセスのデータに必須なものは「顧客の情報」と「プロダクトの情報」
藤島:
今回は「カスタマーサクセスはデータ基盤から揃えろ」をテーマに、
NE株式会社の甲斐さんにカスタマーサクセスのデータについて色々と質問していきたいと思います。
ストレートに聞きますが、「カスタマーサクセスのデータ」としては何が必要になりますか。
甲斐:
データと言っても色々ある中で、
データの分類をした時に分かりやすいとよく言われているのは「DEARフレームワーク」です。
藤島:
DEARフレームワークは「D・E・A・R(D=Deployment, A=Adoption, E=Engagement, R=ROI)」それぞれの頭文字に紐づくデータがありますが、
その中でも甲斐さんが「優先度が高い」と思う情報とは何でしょうか。
<※編集部註:DEARフレームワークについての記事はこちら>
甲斐:
まずは「顧客の情報」と「プロダクトの情報」、この二つは必須かなと思います。
顧客のフェーズによって、DEARフレームワークの中でも優先度や比重が変わってきます。
例えばオンボーディングのフェーズだと、お客様側でプロダクト設定の進捗等が重視されるので、
プロダクトの情報と顧客が本来やりたい事をしっかりと組み合わせていく事が大事になります。
そこから工程が後ろに進んで顧客のプロダクトの利用が深まっていくと、
ちゃんと顧客との関係性が築けているか、
契約更新をするタイミングまでにどのようなコミュニケーションが取れているかが重要になると言えます。
藤島:
最近よく「DEARフレームワークと聞きますが、どれからやればいいのでしょうか・・・」
と質問されることが多いです。
この質問については、
一番最初のフェーズである「D=デプロイメント」から始めるのが良く、
プロダクトの利用データ等はまず最初に取る、というのが鉄板だとお答えしています。
「最初のオンボーディング時の設定がちゃんとできているかどうか」が何よりも重要ですね。
具体的には、最初のプロダクト利用の諸準備がちゃんとできている状態を取り、
その後の「A=アダプション」のフェーズにおいて、機能を利用してるだけではなく上手く使って頂きつつも、
顧客と自社の担当者同士の関係性が良いのかどうか、も重要になってきます。
その上で、顧客理解をするためのデータが必要になってきますし、
上手く「定性的なデータ」や「定量的なデータ」をかみ合わせながら顧客理解に使うことができると良いでしょう。
「顧客との関係性」等の定性データはどう扱う?
藤島:
「D=デプロイメント」のフェーズだと、
顧客の製品の設定状況やログイン状況、機能の利用状況等が定量的に測れますが、
「顧客との関係性」をデータにするのはなかなかイメージが付きにくいですよね。
実際に甲斐さんは「顧客との関係性」はどのようにデータ化しているのでしょうか。
甲斐:
ユーザーから得た情報はテキスト等定性的な情報も多いかと思いますが、
なるべく定量的なものに変換していくということが、データを扱っていく上では一番やりやすいです。
テキストマイニングのような形で処理していくというのも一つのやり方ですが、
ユーザーの課題がある場合に課題をグルーピングして、ある程度「こういうものはよく聞かれる」という選択形式にして、
それを蓄積しながら判断できるような形にしていく事が一番扱いやすく、手軽にできると言えます。
藤島:
上手くデータを加工し、ちゃんと使えるようにするということですね。
そういったデータを集めるという観点で、どのような手順を踏んでデータを集めていますか。
甲斐:
弊社では大きく2パターンあると思っており、
①お客様へのアンケートを取る、
②お客様と会話をして聞く、具体的にはメールや電話をしてコミュニケーションを取る
の2つです。
藤島:
②のお客様との会話について、もう少し細かくどのようにやられているか教えていただけますか。
甲斐:
例えば、お客様がサービスのご利用を開始されて、初回の商談や打ち合わせをする時に、
最初は機械的にアンケートをお送りしご回答していただいています。
とはいえ、アンケートの情報はどうしても文脈が伝わりづらいので、
「アンケートではこう回答されているけど、実際はこんなことを言いたかったんだ」等、
細かい観点を1個ずつ補足しようとしています。
藤島:
なるほど。
ハイタッチのカスタマーサクセスの方はCSOps(オペレーションズ)の方が用意したヒアリング項目があり、
それをお客様にヒアリングする機会を設けているということでしょうか。
甲斐:
そうですね。
オンボーディングのフェーズでは「最初にこう言った事を聞こう」といったテンプレートがあり、
そこに沿ってお客様に聞きながら入力していく形です。
藤島:
ちなみにそのテンプレートではどんなことを聞くんですか。
甲斐:
1番大事なのは「ユーザーの課題をどう解決したいのか」ということです。
弊社ではいくつかのサービスと連携させることもあるので、
「どういったサービスと連携させたいか』といったニーズを細かく聞きます。
あるいは、ユーザーの方のリテラシーも踏まえて、
ユーザーの方にとってその製品がどの程度の難易度なのかをこちらで判断し、CSの観点で点数付けする事もあります。
カスタマーサクセスのデータ基盤に求めること
藤島:
カスタマーサクセスのデータを扱ってこられてきた中で、
「理想のカスタマーサクセスのデータ基盤」についてはどう考えますか。
データ基盤に求めること①:
マーケ〜CSまで情報が繋がっている状態を実現できるか
甲斐:
私の中では3つあります。
1つ目は「マーケティングの現場からちゃんと情報が繋がっている状態」を実現できることです。
マーケとプロダクトの情報だと名寄せの問題があったり、
担当者が複数いてアカウントがいくつもあって統合が難しい、という問題がよくあります。
データの整理をしていくにはある程度人の目も必要であり、
データ整理・統合という観点で精度が保たれて、マーケティングからCSの現場まで使えるデータにちゃんと1本に繋がっているという事は、とても理想的な状態と言えます。
藤島:
カスタマーサクセスの前段階から「法人」という取引単位があって担当者もいて、
かつ、ツールのアカウントが担当者と紐づいてるかと言うと分からない場合も多いですよね。
それぞれのデータが点在していることも多いので、
うまくマーケ段階からカスタマーサクセスに至るまでちゃんとデータ基盤として整えていくという作業は必要ですよね。
データ基盤に求めること②:
CSやセールスも自由に情報にアクセスし、入力できるか
甲斐:
2つ目は「カスタマーサクセスやセールスが自由に情報にアクセスできる」ということも大事だと思います。
各担当者が、色々な情報を見たり・触れたり・更新したりという作業が日々発生します。
その運用が難しければ、データの鮮度が落ちてしまうことにも繋がります。
こういったデータに誰でも自由にアクセスでき、見たり・触れたりする事が重要だと言えます。
データ基盤に求めること③:
ある程度柔軟に作り替え・カスタマイズできる余地があるか
甲斐:
同じような観点で言うと、
3つ目として「ある程度柔軟に作り替えができる余地がある」ということも、データ基盤に求めることかなと思います。
カスタマーサクセスはまだまだ「生物(なまもの)」であると思っており、
オンボーディングのやり方一つとっても、最適な方法を確立している会社はまだまだ少ないです。
弊社でもそのやり方をアップデートしていく中で、どんな情報をお客様からヒアリングするのか、
どんなステップでオンボーディングを進めていくか、
ということも日々試行錯誤してアップデートがかかる状態です。
つまり、見たい項目も日々変化し増減しやすいため、
そうした運用の変更に耐えうるツールや、ある程度CSの方が自分たちでカスタム出来るツールであることが、
「ちゃんと運用していく」という上では重要な要素になると言えます。
藤島:
確かに、カスタマーサクセスの統計データやアンケートデータ等はよく見ますが、
それを見てもまだまだどの会社も体制が不十分で、進め方に自信がない会社が多いイメージがあります。
オンボーディングも「うちは完璧です」という会社もおそらく殆どいない中で、
現場としてもOps的にも改善し続ける必要があります。
甲斐さんがおっしゃっていただいた通り、
変化に耐えうる事や、今後変わってもそれを更新し続けられるということは非常に重要だと言えます。