カスタマーサクセスが知るべきKPI 27選を全網羅!

  • 公開日:2022年10月5日(水)

カスタマーサクセスのゴールは、自社が提供する製品・サービスを通じて顧客のビジネスの成功に貢献することです。

カスタマーサクセスのKPI(Key Performance Indicator = 重要業績評価指標)には、解約率やNPS(ネット・プロモーター・スコア)がよく使われます。

いずれも大切な指標ではありますが、それだけを指標とするのは不十分です。なぜなら、カスタマーサクセスの担当者が気付いた時には顧客が製品・サービスから離れてしまっており「時すでに遅し」という状況になるからです。

この記事では、カスタマーサクセスのKPI指標について、KPIを設定することが重要な理由や設定方法、担当者なら知っておきたい27のKPI指標について解説します。

カスタマーサクセスにとってKPI設定が重要な理由とは?

カスタマーサクセスにとって適切なKPI設定が重要な4つの理由は以下の通りです。

  • KPIを達成している状況は、顧客に価値を提供できている、つまり自社のビジネスが順調であることを意味する
  • KPIを達成してない状況は、顧客に価値を提供できていないサインとなる
  • サインがあれば、プロダクト改善や追加施策の実行などアクションが起こせる
  • 改善アクションがさらなる価値を生み、自社および顧客の事業の成功に貢献する

解約率だけを指標とする製品はどうなるでしょうか。

カスタマーサクセスの担当者が顧客離れに気づくのは、解約率が上がってきてからです。誰もが、解約率が上がる前に顧客離れを食い止めたいと思うでしょう。そこで、解約率以外にもKPIを設定し、顧客が順調にサービスの価値を享受できているか把握することが大切です。

カスタマーサクセスが知るべきKPI指標 27選を一挙解説!

カスタマーサクセスの担当者なら知っておきたいKPI指標について全27選を紹介します。

ビジネス指標に関するKPI

解約率

解約率とは、月額サービスやサブスクリプションビジネスにおいて一定期間内に「解約」「契約終了」した顧客の割合を示します。SaaSのような毎月課金型のビジネスでは、もっとも重要な指標です。解約率の上昇は売上が減少することを意味するため、カスタマーサクセスは解約率を低く抑えるためにあらゆる施策を講じる必要があります。

KPI-1

LTV 顧客生涯価値

LTV(=Life Time Value)とは、一人の顧客がサービスの利用開始から終了までにもたらす平均的な売上額を指します。LTVを積み上げたものが、そのまま売上となるため解約率と合わせてカスタマーサクセスが見るべき必須の指標と言えます。LTVを増やすには平均顧客単価を上げる、解約率を下げて平均利用期間を伸ばす、収益率をあげるなどの施策が有効です。LTVを把握すれば、後述のCAC(顧客獲得単価)が適正かをはかる目安にもなります。LTVの計算式はいくつかありますが、代表的な式をご紹介します。

KPI-2

MRR 月次経常収益、ARR 年次経常収益

月次経常収益(MRR=Monthly Recurring Revenue)と年次経常収益(ARR=Annual Recurring Revenue)は、特定の期間において継続的に発生する収益額を指します。初期費用やスポットの開発費のような一時的な売上を含まず、安定的に発生している収益を対象とした指標です。MRRやARRはビジネスの安定性をはかることができます。

KPI-3

【参考記事】SaaSの基本となる指標 MRRとは?

NRR 収益継続率

NRR 収益継続率(Net Retention Revenue)とは、既存顧客からの収益が、一定期間でどのくらい維持できているかを示す指標です。顧客がサービスに感じている価値の変化を端的に表すことができるほか、短期的な収益の予測にも用いることができます。

KPI-4

【参考記事】 なぜNRRがSaaSにとって重要なのか?改善のためのポイント

顧客維持率 CRR

顧客維持率(CRR=Customer Retention Rate)とは、一定期間に契約終了を迎えた顧客のうち再契約または契約更新をした顧客の割合を指します。顧客がサービスに価値を感じているかという点ではNRRと似ていますが、NRRが収益額をはかる指標であることと比較して、CRRは顧客数を測ります。

KPI-5

ARPA アカウント単価、ARPU ユーザー単価

アカウント単価(ARPA=Average Revenue Per Account)やユーザー単価(ARPU=Average Revenue Per User)は、一単位の顧客やユーザーから平均的に得られる収益額を指します。顧客単価が一定以下の場合には顧客サポートを手厚くしたり、顧客単価に変化がない場合にはクロスセルを提案したりと、アクションに結びつけやすい指標です。

KIP-6

収益増加額 Expansion Revenue

Expansion Revenue 収益増加額とは、アップセルやクロスセルによってもたらされる収益を指します。初期契約にアドオンする形でどれくらい収益を上げることができたか、つまり顧客がサービスに価値を感じ、エンゲージメントしてくれているかを測れます。業界、企業サイズなどで分析を行えば、どのような顧客に価値を提供できているか(できていないか)を推測するのにも役立ちます。

収益減少額 Contraction or Downgrade

収益減少額とは、契約プランのダウングレードやサービスの一部解約などで失われた収益を指します。顧客がサービスに満足していない証拠であり、解約率の先行指標として見るべき指標です。収益減少額の大きい顧客は価値を感じられていないため、先手でフォローアップを行います。

契約更新による収益率 RRR

契約更新による収益率(RRR=Revenue Renewal Rate)とは、一定期間の収益のうち契約更新による割合をはかる指標です。NRRと違って期間中の拡大収益や減少収益は考慮に入れません。

KPI-7

アップセル額

アップセルとは、一定期間のうちに顧客によるアップグレードやクロスセルで追加の収益が発生することです。アップセルが発生することは顧客単価の向上につながるほか、顧客のロイヤルティをはかる指標としても使うことができます。純粋なアップセルの金額によってはかる場合もあれば、アップセル率をはかることもあります。

KPI-8

顧客獲得単価 CAC

顧客獲得単価(CAC=Customer Acquisition Cost)とは、1顧客獲得するために必要な平均費用を指します。CACをはかることでマーケティングの効率性をはかることができます。経営視点では常にLTV>CACとなるよう工夫が必要であり、いかにCACを下げるかが収益改善のポイントです。

KPI-9

顧客維持コスト CRC

顧客維持コスト(CRC=Customer Retention Cost)とは、既存顧客の契約を維持するのに必要なコストを指します。CRCをはかることは、既存の顧客に向き合うのに必要なコストを知ることであり、カスタマーサクセスにかかるコストとも言えます。CRCはコストの金額を見るほか、ARRに対するCRC比率を見る場合もあります。

【参考記事】 カスタマーサクセスのコスト「CRC」とは?フェーズごとの目安や最適化の方法も解説

KPI-10

カスタマーマネジメントに関するKPI

NPS 顧客推奨度

NPS(=Net Promotor Score)とは、顧客ロイヤルティをはかる指標です。「どれくらい製品・サービスを周りの人にオススメしたいか」という観点で測られます。NPSはビジネスの成長性と強い関連性があるというデータもあり、シンプルな質問一つではかれることから多くの企業で取り入れられている指標です。

【参考記事】 カスタマーサクセスにとって重要なNPSとは?活用のポイントも解説

KPI-11

CSAT 顧客満足度

顧客満足度とは、製品・サービスを使った顧客の満足度をはかる指標です。NPSと似ていると思われがちですが、NPSは他者への推奨度(=長期的・広義の体験を包括した回答となる)を測ることに対して、CSATは回答者の回答時点の満足度(=より短期的な回答を得られる)をはかれます。機能改善や新プランの導入など、特定施策に対する効果をはかりたい場合などに有効です。

カスタマーヘルススコア

カスタマーヘルススコアとは、各社で定義したカスタマーヘルス(顧客の製品利用状況)を定量的に計測したものです。指標に正解はなく、業界やサービスによって顧客が”健康”であるという定義は異なります。カスタマーヘルスの定義には、以下のような指標が使われます。

・顧客のアカウントアクティブ率

・特定の機能の利用率

・利用回数、利用頻度

・契約更新回数etc…

オンボーディング完了率

オンボーディング完了率とは、一定期間に契約に至った顧客のうちオンボーディングプロセスを完了した顧客の割合をさします。SaaSのようなビジネスにおいて、製品のセットアップが完了し、顧客がサービスを使える状態に持っていくことは、それ以降のサービス価値を体感してもらうために重要な指標です。

KPI-12

オンボーディングコスト

オンボーディングコストとは、契約に至った顧客がオンボーディングプロセスを完了するまでにかかったコストをさします。オンボーディングコストを計測することで、カスタマーサクセスの活動の効率性を測れます。

KPI-13

有料化率

有料化率(コンバージョンレート)とは、無料版の製品・サービスを使う顧客のうち有料製品・サービスの契約に至った顧客の割合をさします。有料化率は収益へ直結する指標です。有料化率が低く、無料版での離脱が多い場合は顧客がサービスの価値を感じられていない証拠であり製品改良やマーケティング戦略の改善などの施策を打つ必要があります。

KPI-14

初回CS対応解決率

初回カスタマーサポート対応解決率(First Contact Resolution Rate)とは、あらゆるチャネルにおいて顧客からの問い合わせが発生した際に、初回対応で解決できる割合をさします。顧客にとって、質問をその場で解決できることはサービス体験の向上につながります。

KPI-15

プロダクト指標に関するKPI

日次利用者数(DAU)、月次利用者数(MAU)

日次利用者数(DAU=Daily Active User)、月次利用者数は(MAU=Monthly Active User)とは、日次・月次においてアクティブであるユーザー数をさします。製品・サービスが利用されていることは、顧客がエンゲージメントしている状態です。指標として使う際には、”アクティブ”が何をさすか製品・サービスごとに独自の定義が必要です。

定着率(DAU/MAU)

定着率とは、顧客がどれくらい製品・サービスに定着しているかをDAU/MAUを用いて示したものです。単なるDAUとMAUが利用者数を表すことに対して、定着率は利用者の質を表しています。顧客が毎日使うような性質のサービスを提供している場合は定着率が重要になります。

KPI-16

平均セッション数(利用回数)

平均セッション数とは、特定の期間における顧客あたりのセッション数を表します。セッション数が大きくなればなるほど、顧客が製品・サービスにエンゲージしている状態であることを示します。顧客をセグメントして分析することができれば、セッション数が低い顧客群に対するアクションを起こすこともできます。

KPI-17

平均滞在時間

平均滞在時間とは、セッションごとに顧客が製品・サービスに費やしている時間をはかる指標です。滞在時間が長いほど、顧客がエンゲージメントしていると思われがちですが、利用方法がわからずに長い時間滞在している可能性もあり数値の裏にある状況を分析する必要がある指標です。

KPI-18

重要アクション実行率

重要アクション実行率とは、顧客が製品・サービスのコアとなる価値(重要アクション)を享受できている割合をさします。コラボレーションツールであればタスク管理、会計ツールであれば請求書発行など、サービスごとに核となる機能があるはずです。セッションごとに重要アクションを起こしている割合が高いほど、顧客はサービスの価値を享受していると考えます。

KPI-19

アクティベーション率

アクティベーション率とは、新規契約した顧客がアクティブ化する割合を示したものです。SaaSのようなビジネスにおいて、契約が完了していることと、アクティブに利用していることの間には大きな差があります。アクティベーション率を図ることで、オンボーディングのサポートが十分か、プロダクトの改善余地はないかなどのアクションにつなげられます。

KPI-20

機能アクティブ率

機能アクティブ率とは、

顧客に使ってほしいコアとなる機能を利用しているユーザーの割合をさします。どの機能を使って計測するかは製品・サービスによって異なりますが、コラボレーションツールであればタスク管理、会計ツールであれば請求書発行機能などが挙げられます。コアとなる機能を使っていない顧客には、追加のフォローをするなどアクションにつなげられます。

KPI-21

価値提供までの経過時間 Time to value

価値提供までの経過時間とは、顧客がサービスを使い始めてからコアとなる機能を使うまでにかかる所要時間をさします。価値提供までの時間が長ければ長いほど、顧客がサービスから離脱する可能性が高まります。有料化率が低い、オンボーディングでの離脱が多い場合は、この指標を改善する施策を打つことも選択肢として考えます。

適切なKPIの選び方とは?

前章ではカスタマーサクセスが知流べきKPI27選を解説しました。

新しくカスタマーサクセスの担当になった人は「全ての指標を追わなきゃいけないの?」と思うかもしれませんが、そうではありません。

カスタマーサクセスが追うべきKPIは、業種やサービスの性質によって異なるため、自社のビジネスにあったKPIを設定することが大切です。

KPIを設定する方法はさまざまなやり方がありますが、以下の3点を考慮して設定します。

  • 自社の製品・サービスにあった理想のカスタマージャーニーを描き、ジャーニーの節目ごとに指標を設定する
  • すでに製品・サービスにロイヤルティの高い顧客がいる場合はパターンを見出す(サービスを離れてしまった顧客群の中からは解約と関連している指標を見出す)
  • 次のアクションを起こしやすいKPIを選ぶ

KPIはビジネスのステージによっても変化するものです。事業を運営する中で、より実態に即したKPIがあれば、必要に応じて修正することも必要です。

【参考記事】カスタマーサクセスのKPIにはどんなものがある?フェーズごとに重要な指標も解説

適切なKPIを選んでビジネスのゴールを達成しよう

本記事では、カスタマーサクセスが知っておきたいKPIについて、その重要性や設定方法、具体的なKPI27選について解説しました。

紹介した27個のKPIは、全てを設定する必要はなく自社のビジネスモデルにあった指標を追うことが大切です。

実際のKPI設計や測定の方法など具体的な方法に関してはこちらのEbookでも詳しく解説しています。あわせてご一読ください。
【無料Ebook】目標が設計できる カスタマーサクセス指標解説Ebook

 

Topics: カスタマーサクセス

新規CTA
新規CTA

最新記事