カスタマーサクセスについて勉強していると、「ヘルススコア」という言葉をよく聞くと思います。
「ヘルススコア」とは、顧客と長く取引をする上で、お客様の状態を可視化したものです。
SaaS(Software as a Service)ビジネスの場合、お客様と長い期間取引することになります。
契約期間も半年や1年、長いと2年〜3年と年単位での取引が発生しますが、
そういった長期間の中でお客様がどのような状態なのか、がわからないと「急に解約される」といった事態が発生してしまいます。
急な解約を防止するために、長期間にわたってお客様の契約後のデータを見える化して、お客様がどういう状況にあるのか把握するためのもの、それこそが「ヘルススコア」なのです。
まさにお客様の状態を測るための「通信簿」と言っても良いでしょう。
ヘルススコアはどう作る?
ヘルススコアを作るための考え方として「DEAR フレームワーク」というものがあります。
DEARフレームワークは、カスタマーサクセスツールのベンダーとして有名なGainsight社が用意している、ヘルススコアを設計するためのツールです。
DEARはそれぞれ「D・E・A・R」の頭文字を取ったものであり、簡単に説明すると下記の通りです。
- D=Deployment
製品を使い始めたお客様が、初期設定やオンボーディングを無事にできているのかどうかの指標です。 - E=Engagement
お客様との関係性を表す指標です。
例えば、お客様がこちらから送付したメールに対して返事をしてくれているのか、自社のイベントを案内したら、お客様企業の他の方にも紹介してくれているか、等が挙げられます。
お客様との関係性が良い状態であれば上記の反応も良好である場合が多いですが、関係性が良くない状態だと、メールを返してくれなかったり、イベントに参加してくれない、といった状態に陥ってしまいかねません。 - A=Adoption
アドプション、という言葉は日本だと聞き慣れないかもしれませんが、「製品が実際に利用されているかどうか」を表す指標です。
例えば、毎月ちゃんと自社サービスにログインしてくれているのか、基本的な機能をちゃんと使ってくれているのか、といった点が挙げられます。 - R=ROI(Return on Investment)
お客様が製品を購入したり利用したりした後の費用対効果や、導入後の具体的な効果が出ているかどうかを表す指標です。
DEARフレームワークの頭文字である「D・E・A・R」のそれぞれの項目をしっかり計測することによって、お客様の状況が契約後でも見える化できるようにする、ということがヘルススコアの考えになります。
「Engagement」をどう計測するか?
DEARフレームワークのうち、例えばAdoptionは製品を利用してもらうことが指標なるのでわかりやすいですが、Engagementはお客様との関係性を表す指標なので、どのように計測するべきか迷ってしまうかもしれません。
Engagementについては、最初はシンプルに考えるべきでしょう。
例えばマーケティングであればマーケティングオートメーションというツールがあり、メールを送ったら開封してくれているか、セミナーを開催したときに参加してくれているか、といったことを計測することが可能です。
同様に、カスタマーサクセスの活動においても、メールやイベントへの反応がわかるようなコミュニケーションのツールを使って、お客様に反応されているかどうかを見える化することができるでしょう。
利用率の把握(「Deployment」「Adoption」)も重要
Engagementに加えて、特に重要だと考えているのが、「Deployment」と「Adoption」です。
つまり、「製品が利用されているかどうか=利用率」を把握することが重要なのです。
利用率を計測するためには、計測できるような何かしらのツールを導入すべきでしょう。
例えば、SQL(tructured Query Language)と言われるプログラミング言語を使って、データベースから利用状況を取ってくる方法もあります。
Gainsightのようなカスタマーサクセスツールにも、元々「利用状況の見える化」ができる機能があるので、カスタマーサクセスツールに搭載されている機能を活用して自社サイトにコードを入れ、製品がちゃんと利用されているかどうか、をわかるようにできます。
自社の製品の利用率がある程度わかるようになれば、「このお客様はちゃんと定期的に使っていただいているな」「製品に対してモチベーション高い状況で取り組んでいただいているのだな」ということもわかってきます。
「利用率が上がったか、下がったか」、お客様の会社ごとの利用率をわざわざ見に行かなくても、ヘルススコアで可視化されていくのです。
ヘルススコアのツールでは、信号機のように「赤・青・黄色」といった色で今の状況が一眼でわかるようになっている機能もあります。(赤信号だと危険、青信号だと問題なし、等)
カスタマーサクセスを進めていく上では、お客様の状況を見える化して、赤信号になったときにはなるべく早くフォローアップをすることが重要です。
また、自社の製品に対して適したヘルススコアを作っていくことも同様に重要です。
まとめ
カスタマーサクセスの取り組みを進めていく上で、お客様の状態、例えば自社とお客様の関係や、お客様の製品の利用率を可視化する仕組みが「ヘルススコア」であるとご説明しました。
ヘルススコアを作る上での考え方としては、Gainsightが作成した「DEARフレームワーク」が有名です。
DEARフレームワークは、日本国内のカスタマーサクセス先進企業と言えるSansan株式会社でも取り入れられており、「Deployment」「Adoption」「Engagement」「ROI」の頭文字から取られています。
お客様の状態を可視化することで、自社として取り組むべき施策やフォローアップの方法も変わってきますので、DEARフレームワークを参考に、自社のあるべきヘルススコアを考えてみてはいかがでしょうか。