カスタマーサクセスで重要な「ヘルススコア」。
ヘルススコアもうまく使わなければ宝の持ち腐れになってしまいます。
今回はそんなヘルススコアの失敗・成功事例を共有します。
今回も、カスタマーサクセス製品である「CustomerCore」を運営しております、
株式会社リンクの事業責任者の内木場 健太郎 様・守屋 友里 様をお迎えし、
openpage代表・藤島との対談形式でお送りします。
<株式会社リンクについて>
https://www.link.co.jp/
■前回までの記事
・【必見】カスタマーサクセスはアラート設計が重要!
・【無駄が多い?】カスタマーサクセスのタスク管理必勝法!
ヘルススコアの成功・失敗の分かれ道は「最初からしっかり作りすぎない」こと!?
藤島:
ヘルススコアの運用は「うまくいっている」という声もあれば「うまくいってない」という声もよく聞きますが、
うまくいく・いかないの「違い」はどこにあるのでしょうか?
内木場:
いわゆるヘルススコアというさまざまな変数を組み合わせて、
総合点を出す仕組みをうまく運用している企業は少ないのではないでしょうか。
藤島:
カスタマーサクセスのヘルススコアはMA(マーケティングオートメーション)のスコアリングに考え方が近いかなと思ったています。
MAでもスコアリングの運用が失敗しているケースが非常に多いと聞きます。
そのスコアリングを設計する根拠や、スコアの良し悪しの判断が難しいようです。
カスタマーサクセスも同じようにヘルススコアの点数のロジックや、スコアの良し悪しの判断が難しいのではないでしょうか。
内木場:
マーケティングとカスタマーサクセスは似ているとも言えます。
MAでも、例えば「このページを見たらXX点」とか、「料金ページまで行っていたらXX点」等、
加点式で最終的なスコアを出しているツールも多いと思います。
カスタマーサクセスも「この機能を使っていればXX点」「この値が一定数であればXX点」。
結果として「総合XX点です」という風にスコアを出しても、
「総合点」が出た瞬間にぼやけてしまう、ということがよく起きてるような気がします。
藤島:
以前Sansan社の山田さんのお話をお伺いしたのですが、
「低い・普通・良い・超良い」のように信号機のように点数にグラデーションを作り、
それぞれで解約率をシミュレーションする、という方法をおっしゃっていました。
そういうことができる企業だったらいいのですが、
例えば自分でそれやれって言われると、なんかあんまりうまくいかないかも、という感覚があります。
内木場:
いずれにしても、適切なヘルススコアを作るのはとても時間がかかるのです。
そのため、カスタマーサクセスの活動を始める上では、「まずヘルススコアはしっかり作る」ということはおすすめしていないのです。
むしろ、例えばSaaSであればそのツールによって、お客様の成果に繋がる値っていうのがあると思いますので、
加点式で総合評価をしていくのではなくて、重要な指標の変化をしっかり見ていくところからスタートすることをおすすめしています。
藤島:
なるほど。僕も非常に同意でして、
ヘルススコアって、Gainsightが提唱しているDEARフレームワークという考え方でみると、かなり複雑な変数を足し合わせた合算値だと思っています。
まだまだ日本のマーケットだと、まだそこまでいってないというか、そもそもカスタマーサクセスのためのデータ出しをこれからやりますみたいな感じだと思うので、
そういった場合っていうのは本当に「重要な変数」だけでいいと、僕も本当に思うんですよね。
それこそ製品のログイン状況とか、重要な機能の利用率だとか、
それくらい取れれば、あとはもうそんなに複雑に判断しなくてもいいわけで。
内木場:
そうですね。本当にその重要な変数をいくつか見つけるタイミングがいずれくると思います。
いくつか変数が見て見えてきたときに初めて、「じゃあこれを総合的に判断してみよう」というような形で、
いわゆるヘルススコアという形に進んでいくのではないでしょうか。
まずはその重要な変数の変化をしっかり見ていく、その変数は何なのかっていうことを特定していくところからスタートするのがいいと思います。
ヘルススコアを「作った方がいいケース」は、アップセル・クロスセルを狙うタイミング
藤島:
逆にヘルススコアを「こういう場合はやった方がいい」「作った方がいいですよ」といった場面はありますか?
守屋:
例えばアップセルに向けたデータの動きが見えているのであれば、
ヘルススコアに取り組んでみてもいいのかなとは思っています。
藤島:
製品がある程度複数あったり、LTVを上げる余地が大きい場合、ということですね。
守屋:
そうですね。
あとは過去のお客様の傾向値として、「こういった変数とこういった変数を掛け合わせてみたときに、かなりアップセル/エクスパンションするチャンスがありそうだ」といったところが既に見えているのであれば、
お客様全体に対してヘルススコアを組んでみて、運用をしてみるのはいかがでしょうか。
藤島:
なるほど。
それこそ今上場しているSaaSの企業さんは、マルチプロダクト的な戦略を進めている企業も多い。M&Aで他の事業を買ったりですとか、新規事業によって事業化したりですとか。
マルチプロダクト化を進めている企業ではLTVを高めていかないといけないので、
クロスセルに行くための判断軸としてのヘルススコアをしっかり設計するっていうのが、非常に有効的かもしれないですね。
ちなみにヘルススコアの成功失敗みたいな話をさせていただいたと思うんですけれども、
ヘルススコアの失敗例で、何かわかりやすい例をいくつか教えてもらっていいでしょうか。
内木場:
やっぱり「総合スコア」が失敗の原因になりやすいのかなと思います。
先ほどのMAの話もそうでしたけど、「この値はこのお客様にとってはとても価値のあることだけ、他のお客様にとってはそうでもない」等、ケースバイケースだと思います。
それら1個1個見ていくのはお客さんの周辺のデータと合わせて見ていくってことは有効だと思うんですけども、
それを何か一つの総合点としてまとめてしまうと全部混ざってしまって、どうしてもぼやけてしまうのです。
そのため、総合点にした場合に「数字が意味を失ってしまう」ということが起きてるんじゃないかなと思いますね。
藤島:
変にヘルススコアっていうところで縛られて、総合スコアを出すよりは、
より重要な変数にフォーカスして見ていく、ということですね。
内木場:
ヘルススコアの運用に失敗したら一回「バラす」ことも重要でしょう。
色々試行錯誤をされて数式を組み立てたけれども、どうも現場等の温度感があると。
そのヘルススコアに対して、現場があまり何も感じなくなってしまう、いわば置物になってしまうのであれば、
1度分解して、1個1個の指標を見ていく、というところに立ち戻ってみることが有効ではないでしょうか。